公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問13 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問13

 

多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念として、正しいものを1つ選べ。

① 社会的促進

② 集合的無知

集団極性化

④ 情報的影響

⑤ 傍観者効果

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は⑤です

 

 

①社会的促進 ×

 

社会的促進とは、何らかの課題に取り組むときに、周囲に他人がいる方が課題の遂行量が増加したり、成績が上がったりする現象です。

 

オルポート,F.H.は、単語連想課題や意見産出課題を用いた実験を行い、単独で行う群と集団で行う群を比較したところ、集団で行う群の遂行量が多くなるということを実証しました。

 

社会的促進は多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念ではないので誤答となります。

 

 

 

 

 

②集合的無知 ×

 

集合的無知とは、確信や自信がなく曖昧な状況の場合、他人の行動を基準に物事を判断するというものです。

 

例として、飲食店を選ぶ際に食べログの評価が高い店に行く、飲食店街で並んでいる人の数が多い店に行くなどの行動を指します。

 

有名な話だと、街で倒れた人がいたとして、人通りの多いところより、人通りの少ないところの方が援助行動の促進されやすくなります。

 

これは「きっと誰かが助けてくれるだろう」「みんなが通り過ぎているから、自分も助けなくても大丈夫だろう」という心理が働くからです。

 

このような、他人の行動を見たときに、それにつられて同じ行動を取る性質が人にあり、これを、社会的証明の原理(パンドワゴン効果)と呼びます。

 

社会的証明の原理は集合的無知とかなり似た意味になります。

 

 

集合的無知は多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念ではなく、大勢の人の行動に釣られる話しで、問題とは合わないため誤答となります。

 

 

 

 

 

集団極性化 ×

 

集団で物事を決める、意思決定を行うときに集団で行うことにより、個人で行うときに比べ感情や行動などが、極端な方向に強くなる現象を集団極性化と言います。

 

これはつまり、集団討議後になされる反応の平均が、個々人でなされた反応の平均よりも、極端になって現れるということです。

  集団極性化で、1人で意思決定を行う時よりも、集団で行う時の方がリスクの高いものをリスキー・シフトと呼び、反対に、1人で意思決定を行う時よりもより安全性の高い意思決定になるものをコーシャス・シフトと呼びます。

 

集団極性化が生じる理由は、3つあります。

 

Ⅰ.集団討議では、多数派の意見がより多く聞かれることになり、結局、当初の立場を互いに支持、補強し合うことになるため生じるというものです。

 

Ⅱ.他のメンバーにより好ましい自己像を提示したいがために、他者と比較してあえて人より極端で強い意見を表面するため生じるというものです。

 

Ⅲ.集団討議を通じて集団への自己同一視が起こり、それぞれが自らの社会的アイデンティティを維持するので、そこでの代表意見に同調するためというものです。

 

例えば、会社内の部署間対立などは、Ⅲの自己同一視が起こることが要因になります。

 

これらの法則は、社会心理学者のJ.C.ターナー自己カテゴリー化理論で説明されます。

 

 

集団極性化は一人の時に比べて行動の強化にはなりますが、多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念には当てはまらないので誤答となります。

 

 

 

 

 

④情報的影響 ×

 

情報的影響とは、他者から得た情報を実在に関する証明として受け入れさせるように作用する影響と定義されています。また、態度の形成や行為の決定に関して人々は相互に影響を及ぼし合う。そのような影響は社会的影響と総称されています。

 

集団に所属すると、自分自身の意見を曲げて、多数派に従ってしまうことがありますが、これは集団への同調と呼ばれる現象です。

 

アッシュ,S.E. (Asch,1951)による線分の比較判断課題を用いた実験が有名です。

 

 

実験内容は

 

1枚には線分(標準刺激)、もう1枚には3種類の線分(明らかに3つの長さの違う)が描かれており、被験者に、標準刺激と同じ長さのものはどれか選ばせるという課題で

 

この実験において、被験者は7番目に回答する人のみで、残りの学生はサクラとなってもらいます。

 

線分判断は、線分の長さを変えながら18回行われ、そのうち12回は、7人のサクラ全員が同じように誤った回答を行う集団圧力試行でした。

 

結果、集団圧力条件において、多数者の判断に同調した誤答は32%にも達しました。

同調した被験者は、回答が誤りだと認識していながらも、同一の回答をして同調してしまったという点が注目点になります。

 

この実験により、他の人が自分と違う判断を示したとき、それが誤りであることが明白でも、周囲の判断に引きずられるということが実験により証明されました。

 

 

情報的影響は、多くの意見に引きずられる、誤りと思っていても同調してしまうというもで、多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念ではないので誤答となります。

 

 

 

 

⑤傍観者効果 〇

 

傍観者効果とは、ある事件に対して、自分以外に傍観者がいる時に率先して行動を起こさないという心理で、傍観者が多いほどその効果は高いとされています。

これは、以下の3つの考えによって起こります。

 

多元的無知:他者が積極的に行動しないことによって、事態は緊急性を要しないと考える。

責任分散:他者と同調することで責任や非難が分散されると考える。

評価懸念:行動を起こした時、その結果に対して周囲からのネガティブな評価を恐れる。

 

傍観者効果はニューヨークで起こった婦女殺人事件であるキティ・ジェノヴィーズ事件がきっかけで実験されるようになりました。

 

キティ・ジェノヴィーズ事件は暴漢に襲われた際、沢山の人が叫び声を聞いたにも関わらず、誰一人通報もせず助けにも入らなかったという事件です。

 

 

多くの人がいると、一人のときにはするはずの行動が生じなくなる傾向に関連する概念として、正しいので正答となります。