公認心理師試験 過去問 2019 問57 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問57
問57 うつ病にみられることが多い症状として、適切なものを2つ選べ。
①心気妄想
②迫害妄想
③貧困妄想
④妄想気分
⑤世界没落体験
解答と解説
正答は①と③です
①心気妄想 〇
日本うつ病学会治療ガイドラインによると、
うつ病でも幻覚・妄想といった精神病症状(精神病 性の特徴)を伴うことが少なからずある。その場合、精神病症状を伴わない症例と比べ、鑑別疾患や治療薬の選択に違いが生じるので、精神病症状の有無を確認することは重要である。精神病性うつ病の特徴には大別して、次のように「気分に一致する」ものと「気分に一致しない」ものとがある。
1)「気分に一致する精神病性の特徴」
妄想や幻覚で、その内容が個人的不全感、罪責感、病気、死、虚無感、報いとして処罰を受けることなど、〈典型的な抑うつ性の主題〉と一致したもの。
主要なものとしては、微小妄想(罪業妄想、心気妄想、貧困妄想など)がある。以下に例を示す。
・罪を犯していないのに「大変な罪を犯してしまい、 罰を受けるに違いない」(罪業妄想)
・実際には重大な身体疾患はないのに「極めて重大な病気(がんなど)になってしまった」(心気妄想)
・実際的には経済的に問題がないのに「お金がないので治療を受けることができない」(貧困妄想)
と記されています。
実際に起きていること以上に物事をネガティブに捉えてしまう傾向があるうつ病の特徴的な症状として、心気妄想があることがわかります。
うつ病にみられることが多い症状として、「心気妄想」という選択肢は正しいといえるので正答となります。
②迫害妄想 ×
コトバンクより、迫害妄想とは、害を加えられる,苦しめられる,責められるというような被害を主題にした妄想。周囲のなんでもないできごとを脅かしや迫害のしるしととり,他人の言葉や態度に悪意やあてつけを感じる。と述べられている。
脳科学辞典によると、妄想は、「街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている」(迫害妄想)、「近所の人の咳払いは自分への警告だ」(関係妄想)、「道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る」(注察妄想)、「警察が自分を尾行している」(追跡妄想)などの内容が代表的で、被害妄想と総称する。ときに「自分には世界を動かす力がある」といった誇大妄想のこともある。と述べており、統合失調症の症状として、迫害妄想があると記している。
ウィキペディアでは、妄想 (Delusions) とは、客観的に見て物理的にありえないことを事実だと完全に信じていること[29][30]。以下のように分類される。
被害妄想:「近所の住民に嫌がらせをされる」「通行人がすれ違いざまに自分に悪口を言う」「自分の体臭を他人が悪臭だと感じている」などと思い込む[30]。
関係妄想
注察妄想:常に誰かに見張られていると思い込む[30]。「近隣住民が常に自分を見張っている」「盗聴器で盗聴されている」「思考盗聴されている」「カメラで監視されている」などと思い込む[31]。
追跡妄想:誰かに追われていると思い込む[30]。
心気妄想
宗教妄想
恋愛妄想
被毒妄想:飲食物に毒が入っていると思い込む[30]。
血統妄想
家族否認妄想
物理的被影響妄想
妄想気分
世界没落体験
これら妄想症状は突発的に起こることもあれば、数週間をかけて形成されていくこともある[30]。クレペリンは躁うつ病の特徴として迫害妄想をあげており、双極性でないことが診断に重要である。
と記されており、クレペリンは統合失調症より、躁うつ病の特徴として迫害妄想を挙げ、迫害妄想がある場合は、躁うつ病ではないことを確認してから統合失調症と診断することが重要と述べている。
日本老年医学会によると、ADでは,嫉妬妄想や迫害妄想などの被害的妄 想もよくみられる.病期が進行し,認知機能が低下すると,鏡に映った自分を他人と認識して話しかける鏡徴候,テレビで放映した内容と現実の区別がつかず,眼の前で展開された事実であると主張する誤認などが出現する。と記されており、認知症も迫害妄想を引き起こすことが分かっている。
迫害妄想に繋がる疾患は様々あり、件数は少ないですが状況や条件が重なればうつ病でも迫害妄想の状態になることも考えられます。
ただ、設問はうつ病にみられることが多い症状を問いており、多い症状とは言えないです。
うつ病にみられることが多い症状として、「迫害妄想」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
③貧困妄想 〇
日本うつ病学会治療ガイドラインによると、
うつ病でも幻覚・妄想といった精神病症状(精神病 性の特徴)を伴うことが少なからずある。その場合、精神病症状を伴わない症例と比べ、鑑別疾患や治療薬の選択に違いが生じるので、精神病症状の有無を確認することは重要である。精神病性うつ病の特徴には大別して、次のように「気分に一致する」ものと「気分に一致しない」ものとがある。
1)「気分に一致する精神病性の特徴」
妄想や幻覚で、その内容が個人的不全感、罪責感、病気、死、虚無感、報いとして処罰を受けることなど、〈典型的な抑うつ性の主題〉と一致したもの。
主要なものとしては、微小妄想(罪業妄想、心気妄想、貧困妄想など)がある。以下に例を示す。
・罪を犯していないのに「大変な罪を犯してしまい、 罰を受けるに違いない」(罪業妄想)
・実際には重大な身体疾患はないのに「極めて重大な病気(がんなど)になってしまった」(心気妄想)
・実際的には経済的に問題がないのに「お金がないので治療を受けることができない」(貧困妄想)
と記されています。
実際に起きていること以上に物事をネガティブに捉えてしまう傾向があるうつ病の特徴的な症状として貧困妄想があることがわかります。客観的思考や、持続的な不安感などが合わさると症状として出現しやすいと思います。
うつ病にみられることが多い症状として、「貧困妄想」という選択肢は正しいといえるので正答となります。
④妄想気分 ×
脳科学辞典によると
何かが起きているというただならぬ気配を感じ、それに巻き込まれていると感じるが明確にわからない。外的事象に対する漠然とした意味付け(自己関係付け傾向)が生じてはいるが、特定の意味付けはまだ生じていない。これは統合失調症の急性期の最初の症状であることが多い。自己関係付けに特定の意味が伴うと、妄想知覚が形成される。妄想着想もまた妄想気分に続いて生じることがある。
統合失調症の前駆期にみられる緊迫した気分は、それを外界の事象に関係付ける傾向が生じていない点が妄想気分と異なる。
と記されている。
うつ病の症状として妄想気分があるという文献等はありません。ほぼ統合失調症の一次妄想に使用される概念となっています。
うつ病にみられることが多い症状として、「妄想気分」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
⑤世界没落体験 ×
生活没落体験とは、周囲が不気味に思えて強い不安があり、その先に世界が破滅するような出来事がある、それが自分と深く関係しているという妄想体験を指します。統合失調症の1次妄想の特徴で、統合失調症特有の症状といえます。
うつ病にみられることが多い症状として、「世界没落体験」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。