公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問19 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019 問19

 

問19 ライフサイクルと心の健康の関わりについて、正しいものを1つ選べ。

①人の心身の発達は、成人期でピークになると考えられている。

②女性の更年期障害は、閉経後に様々な身体症状や精神症状を来す病態である。

③青年期は、統合失調症うつ病、社交不安症などの精神疾患の発症が増える時期である。

④各ライフサイクルにおいて対応を要する問題は、疾患の種類にはよらず年齢によって決まる。

認知症は老年期に発症する病気であるため、成人期における認知機能の低下の原因としては別の疾患を考える。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は③です

 

 

①人の心身の発達は、成人期でピークになると考えられている。 ×

 

ライフサイクル論は様々心理学者が発達段階や過程を提示しており

 

ピアジェは「前操作期」→「具体的操作期」→「形式的操作期」という一連の過程の中で、青年期に達成される「形式的操作期」の段階が認知発達の到達点として考えました。

 

フロイトは「口唇期」→「肛門期」→「男根期」→「潜在期」→「性器期」と、ピアジェと同様青年期を到達点としています。

 

一方、エリクソンやハヴィガーストは生涯発達の諸段階を提示しピアジェフロイトの考え方と対比させた考え方を示しました。

 

エリクソンの人間の誕生から死に至る人生のライフサイクルを以下の8つの段階としました。

乳児期:「基本的信頼 対 不信感」

幼児期:「自立性 対 恥」

児童期:「積極性 対 罪悪感」

学童期:「勤勉性 対 劣等感」

青年期:「同一性 対 同一性拡散」

成人期:「親密性 対 孤立」

壮年期:「生殖性 対 自己停滞」

高齢期:「統合性 対 絶望」

 

ハヴィガーストは発達段階の源泉を3つあげている.

 

第1は「身体成熟」で「歩行の学習・青年期における異性への関心」

第2は「社会の文化的圧力」で「読みの学習・市民としての社会への参加の学習」 第3は「個人的な動機や価値意識」で「職業の選択や準備・人生観の形成」

 

としている。

 

また、ハヴィガーストは、乳幼児期から老年期に至るまでの6つの発達段階それぞれに、対応する身体運動技能、知識や判断など習得的技能、パーソナリティ発達、各時期にふさわしい役割などを含んだ具体的な発達課題の内容をあげている。

 

○乳幼児期

・歩行の学習

・固形の食べ物をとることの学習

・話すことの学習

・排泄習慣の自立

・性の相違および性の慎みの学習

・生理的安定の獲得

・社会や事物についての単純な概念形成

・両親,兄弟および他人に自己を情緒的に結びつけることの学習

・正と不正を区別することの学習と両親を発達させること

 

○児童期

・普通のゲームに必要な身体的技能の学習

・成長する生活体としての自己に対する健全な態度の養成

・同年齢の友達と仲良くすることの学習

・男子(女子)としての正しい役割の学習

・読み,書き,計算の基礎的技能を発達させること

・良心,道徳性,価値の尺度を発達させること(内面的な道徳の支配,道徳律に対する尊敬,合理的価値判断力を発達させること)

・人格の独立性をたっせいすること(自立的な人間形成)

・社会的集団ならびに諸機関に対する態度を発達させること(民主的な社会的態度の発達)

 

○青年期

・同年齢の男女両性との洗練された新しい関係

・自己の身体構造を理解し,男性(女性)としての役割を理解

・両親や他の大人からの情緒的独立

・経済的独立に関する自信の確立

・職業の選択および準備

・結婚と家庭生活の準備

・市民的資質に必要な知的技能と観念を発達させる(法律,政治機構,経済学,地理学,人間性,あるいは社会制度などの知識,民主主義の問題を処理するために必要な原語と合理的思考の発達)

・社会的に責任ある行動を求め,かつ成し遂げること

・行動の指針としての価値や理論の体系の学習、適切な科学的世界像と調和した良心的価値の確立(実現しうる価値体系をつくる。自己の世界観をもち、他人と調和しつつ自分の価値体系を守る)

 

○壮年初期

・配偶者の選択

・結婚相手との生活の学習

・家庭生活の出発(第一子をもうける)

・子どもの養育

・家庭の管理

・就職

・市民的責任の負担(家庭外の社会集団の福祉のために責任を負うこと)

・適切な社会集団の発見

 

○中年期

・大人としての市民的社会的責任の達成

・一定の経済的生活水準の確立と維持

・十代の子どもたちが,信頼できる幸福な大人になれるよう援護

・大人の余暇活動を充実すること

・自分と自分の配偶者をひとりの人間として結びつけること

・中年期の生理的変化を理解し,これに適応すること

・老年の両親への適応

 

老年期

・肉体的な強さと健康の衰退に適応すること

・引退と減少した収入に適応すること

・配偶者の師に適応すること

・自分と同年輩の老人たちと明るい親密な関係を確立

・肉体的生活を満足に送れるよう準備態勢を確立する

 

と述べています。

 

少し長くなりましたが、人の心身の発達は、18世紀から19世紀にかけては成人期でピークになるとの過程を示すものが多かったですが、現代は生涯発達心理という老年期も含めた発達までをライフサイクル論として述べているので誤答としています。

 

 

 

 

 

 

②女性の更年期障害は、閉経後に様々な身体症状や精神症状を来す病態である。 ×

 

女性の更年期障害は、閉経の前後5年くらいを「更年期」としています。

 

「更年期」は、女性ホルモンを分泌する卵巣の機能が衰え始め、エストロゲンという物質の量が急激に減少して、ホルモンのバランスがくずれて自律神経が乱れる変化に加え、個人を取り巻く家庭や社会での環境の変化(心理社会的変化)などが、複雑に関与して表現されると考えられております。

 

 

更年期障害は、閉経後ではなく、閉経の前後5年くらいなので誤答としています。

 

 

 

 

 

③青年期は、統合失調症うつ病、社交不安症などの精神疾患の発症が増える時期である。○

 

青年期は15歳~24歳頃を指します。

 

年齢のみで調べると

 

統合失調症の約75%が17歳~25歳の間で発症しています。

 

うつ病に関してははっきりとした見解はありませんが、学生での発症もちらほら見受けられます。

 

双極性障害に関しては概ね15歳以降に現れるという見解が少なくありません。

 

強迫性障害などの神経症圏も青年期前期から生じ始めますので社交不安も同様の年齢から増えると考えます。

 

 

青年期は、統合失調症うつ病、社交不安症などの精神疾患の発症が増える時期であるのは正しいと考えられるので正答となります。

 

 

 

 

 

④各ライフサイクルにおいて対応を要する問題は、疾患の種類にはよらず年齢によって決まる。 ×

 

 ライフサイクルにおいて対応を要する問題は、疾患の種類によらず年齢によって決まるとのことですが

 

 

そもそも疾患の有無に関わらずライフサイクルにおいて対応を要する問題は生じるので誤答とします。

 

 

 

 

 

認知症は老年期に発症する病気であるため、成人期における認知機能の低下の原因としては別の疾患を考える。  ×

 

若年性認知症とは65歳未満で発症した認知症のことで、若年性認知症の好発年齢は40~60歳頃です。

 

厚生労働省が2009年に発表した調査では、推定発症年齢は平均51歳±9.8歳となっています。

 

認知症は主に老年期で発症する病気で、成人期における認知機能の低下の原因としては別の疾患を考えるのは、第一選択として、もしくは急性期である場合は正しいと思われます。

 

 

しかし、診断する場合も年齢が若いと可能性を低く見積もると思われますが、除外因子ではないのと、③の問の方がより正解に近いので誤答とします。