公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問14 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問14

 

乳幼児の社会的参照について、正しいものを1つ選べ。

① 心の理論の成立後に生じてくる。

② 共同注意の出現よりも遅れて1歳以降に現れ始める。

③ 自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる。

④ 自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である。

⑤ 乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は③です

 

 

①心の理論の成立後に生じてくる。 ×

 

心の理論とは、「他者の心を類推し理解する能力」となります。

 

心の理論の主な働きは、次のとおりです。

Ⅰ.他人への心の帰属:他人にも自分と同じように心が宿っているとみなす。

Ⅱ.他人の心理の理解:他人にも自分と同じように心の働きがあることを理解する。

Ⅲ.行動の予測:他人の心理の理解に基づき、他人の言動を予測する。

 

ハインツ・ヴィマーとジョゼフ・パーナーは心の理論の有無を調べるために「誤信念課題」という課題を提唱しました。

 

「誤信念課題」とは、他人が自分とは違う誤った信念(誤信念)を持つことを理解できない課題のことを指します。

 

サリーとアン課題が有名です。

 

〇サリーとアン課題

Ⅰ.サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいる。

Ⅱ.サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行く。

Ⅲ.サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移す。

Ⅳ.サリーが部屋に戻ってくる。

上記の場面を被験者に示し、「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すか?」と被験者に質問します。

正解は「かごの中」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答えます。

 

誤信念課題は、4、5歳児くらい理解できるようになるとわかっています。

 

 

乳幼児の社会的参照は8~10ヶ月頃より見られるとされているので、誤答となります。

 

 

 

 

 

②共同注意の出現よりも遅れて1歳以降に現れ始める ×

 

 

共同注意とは、人が他人と同じ対象に注意を向け、また、他人が自分と同じ対象に注意を向けていることを知っている状態のことを指します。

 

共同注意の獲得時期については多くの研究がされていますが、乳幼児が共同注意を獲得するのは概ね生後9か月頃としています。

 

9か月頃を目安に、乳児は他者を目標志向的な主体として理解し、目標や知覚を共有し、他者と目標物と自分という三者の関係を含んだ三項関係的に関わるマイケル・トマセロ(Tomasello,2005)の乳児の他者理解に重きを置いた発達段階を示しています。

 

通常、生後8ヶ月~10ヶ月頃には、視線追従(親が見ている対象を見ようとする)や社会的参照(自分の行動について親の反応を確かめる)、他人の意図に気づき始めるなど、共同注意に関する行動がいくつも見られるようになります。

 

共同注視にはいくつか種類があり

 

お母さんと目を合わせるなどの、対面的共同注意は生後2か月から半年の間に出現し、

 

お母さんと同じ方向をみるなどの、支持的共同注視は6ヶ月頃より出現し、

 

お母さんが見ている方向をより細かく正確に見れ、社会的参照(自分の行動について親の反応を確かめる、親の意図に気付くなど)を含む共同注意が9か月頃に出現すると言われています。

 

 

「共同注意の出現よりも遅れて1歳以降に現れ始める」ことはなく、9か月頃に共同注意の発達と共に社会的参照が出現するので誤答となります。

 

 

 

 

 

③自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる 〇

 

社会的参照とは、乳幼児が新しい人や物、状況などに遭遇した時に、お母さんの反応をうかがい、お母さんの反応に応じた行動をすることです。

 

自分の行動についてお母さんの反応を確かめる、お母さんの意図に気付くなど、特に何か新しいことをしたり新しい状況に置かれたりすると、お母さんの反応をうかがい、お母さんの表情や態度によってその後の行動を決定するようになります。

 

例えば、初めて会った同年代の子供がおり、お母さんが笑顔でその子供と話していれば安心して近づきますが、不快な顔をしていればお母さんのそばから離れず警戒します。

 

 

乳幼児の社会的参照において、自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じているので正答となります。

 

 

④自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である ×

 

自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為は社会的相互作用となります。

 

正確な出現年齢はわかりかねますが、

 

自我が芽生えて自己の存在に気付くのが、1歳6か月から2歳と言われ

 

言語発達が著しく、3語文まで話せるようなる。「大きい、小さい」などの対比が分かる、色の違いを認識し区別するなど概念形成が可能になるのが、2~3歳なので

 

少なくとも、知識を得て記憶して伝達するのには2~3歳以降に出現すると思われます。

 

 

自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為は社会的相互作用であり、乳幼児の社会的参照に比べ、より高度な次元の活動となるので誤答となります。

 

 

 

 

 

⑤乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する ×

 

大人になり結晶性知能の高まりにより、社会的参照の頻度は減り、社会的参照なくても問題なく社会生活を送れるようにはなってきますが

 

不慣れな場面に遭遇する際は、周囲の様子は周りの人の動きを視るなど社会的参照をする機会が消失することは無いと考えられます。

 

 

乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失することはないので誤答となります。