公認心理師試験 過去問 2019 問11 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問11
秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状を特徴とするパーソナリティ障害として、最も適切なものを1つ選べ。
② 強迫性パーソナリティ障害
③ 猜疑性パーソナリティ障害
④ スキゾイドパーソナリティ障害
⑤ 統合失調型パーソナリティ障害
解答と解説
正答は②です
①境界性パーソナリティ障害 ×
境界性パーソナリティ障害の診断基準 (DSM – 5)
対人関係、自己像、感情などの不安定および著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。次のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
1.現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力。
2.理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。
3.同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観。
4.自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食いなど)。
5.自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し。
6.顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は 2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)。
7.慢性的な空虚感。
8.不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)。
9.一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状。
となっています。不安定な激しい対人関係を持つ点、理想化と脱価値化との両極端を揺れ動く点からは、柔軟性や効率性犠牲にする印象はなく、相手に好意を持たれるように働きかけるときは器用な印象もあります。
秩序や完全さにとらわれる感じとは逆な印象もあります。
秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状には当てはまらないので誤答となります。
②強迫性パーソナリティ障害 〇
強迫性パーソナリティ障害の診断基準(DSM – 5)
秩序、完璧主義、精神および対人関係の統制にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち4つ(またはそれ以上) によって示される。
1.活動の主要点が見失われるまでに、細目、規則、一覧表、順序、構成、または予定表にとらわれる。
2.課題の達成を妨げるような完全主義を示す(例:自分自身の過度に厳密な基準が満たされないという理由で、一つの計画を完成させることができない)。
3.娯楽や友人関係を犠牲にしてまで仕事と生産性に過剰にのめり込む(明白な経済的必要性では説明されない)。
4.道徳、倫理、または価値観についての事柄に、過度に誠実で良心的かつ融通がきかない(文化的または宗教的同一化では説明されない)。
5.感傷的な意味をもたなくなってでも、使い古した、または価値のない物を捨てることができない。
6.自分のやるやり方通りに従わなければ、他人に仕事を任せることができない。または一緒に仕事をすることができない。
7.自分のためにも他人のためにも、けちなお金の使い方をする。お金は将来の破局に備えて貯めておくべきものと思っている。
8.堅苦しさと頑固さを示す。
となっています。1の決まり事にとらわれ過ぎるところ、2の課題の達成を妨げるような完全主義を示すところなどは「秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状を特徴とするパーソナリティ障害」に当てはまるので正答となります。
③猜疑性パーソナリティ障害 ×
猜疑性パーソナリティ障害の診断基準(DSM – 4–TR)
- 他人の動機を悪意のあるものと解釈するといった、広範な不信と疑い深さが成人早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下の4つ(またはそれ以上)によって示される。
1.十分な根拠もないのに、他人が自分を利用する、危害を加える、またはだますという疑いを持つ。
2.友人または仲間の誠実さや信頼を不当に疑い、それに心を奪われている。
3.情報が自分に不利に用いられるという根拠のない恐れのために、他人に秘密を打ち明けたがらない。
4.悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなす、または脅す意味が隠されていると読む。
5.恨みをいだき続ける。つまり、侮辱されたこと、傷つけられたこと、または軽蔑されたことを許さない。
6.自分の性格または評判に対して他人にはわからないような攻撃を感じ取り、すぐに怒って反応する。または逆襲する。
7.配偶者または性的伴侶の貞節に対して、繰り返し道理に合わない疑念を持つ。
また診断基準Bが、統合失調症や、精神病性の障害、一般身体疾患によるものではないことを要求している。
なお、パーソナリティ障害の診断は、特定のパーソナリティの特徴が成人期早期までに明らかになっており、薬物やストレスなど一過性の状態とも区別されており、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を呈している必要がある。
とされています。
一代で成り上がった巨大な権力者が、周囲に過剰に不振を抱いたり、敵対されていると感じやすい人物像を創造すると理解しやすいです。思考にやや柔軟性を欠く部分はあるかもしれませんが、秩序にとらわれることや効率性が犠牲にされるところには至らないです。
よって、秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状には当てはまらないので誤答となります。
④スキゾイドパーソナリティ障害 ×
スキゾイドパーソナリティ障害の診断基準(DSM – 4–TR)
少なくとも以下の4つ以上を満たすことで診断される。
1.家族を含めて、親密な関係を持ちたいとは思わない。あるいはそれを楽しく感じない
2.一貫して孤立した行動を好む
3.異性と性体験を持つことに対する興味が、もしあったとしても少ししかない
4.喜びを感じられるような活動が、もしあったとしても、少ししかない
5.第一度親族以外には、親しい友人、信頼できる友人がいない
6.賞賛にも批判に対しても無関心に見える
7.情緒的な冷たさ、超然とした態度あるいは平板な感情
とされています。
スキゾイドパーソナリティ障害は、シゾイドパーソナリティ障害とも呼ばれることがあります。社会的関係への関心の薄さ、感情の平板化、孤独を選ぶ傾向を特徴とする人格障害で統合失調症の陰性症状に似た印象のもつ症状を含みますが
統合失調症とは全く別な障害とされています。
柔軟性や効率性に欠ける症状は当てはまりますが、秩序や完全さにとらわれることはないように思われます。
よって秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状には当てはまらないので誤答となります。
⑤統合失調型パーソナリティ障害 ×
統合失調型パーソナリティ障害の診断基準(DSM – 5)
以下のような基準Aのうち5つ以上を満たしている。
基準A
1.関係念慮を持ち偶然の出来事に特別な意味づけをするが、確信を持っている関係妄想はではない。
2.文化規範から離れた奇妙なあるいは魔術的な信念があり、テレパシーや予知などで、簡単な儀式を伴うこともある。
3.無いものがあるように感じるというように、知覚の変容がある場合がある。
4.過剰に具体的であったり抽象的であったり、普通とは違った形で言葉を用いたりするなどの奇異な話し方をする。
5.妄想様観念を持ち、疑い深く、自分を陥れようとしているのではないかなどと考える。
6.不適切または限定された感情は、良好な対人関係を保つのに必要なことをうまく扱えない。
7.奇妙な癖や外観は、視線を合わせなかったり、だらしのないあるいは汚れた服装などの特徴を持つことがある。
8.親族以外にほとんど友人がいない。
9.過剰な社会不安は、慣れによって減じることはなく、妄想的な恐怖によってである。
基準Bは統合失調症、気分障害による精神病症状、自閉症スペクトラム障害の経過中ではなく、ほかの精神病性障害でない。
とされています。
統合失調症の陽性症状の思考を持っているような印象です。
対人関係において、人と接したいけど不安や恐怖があるのではなく、そもそも人と接することへの欲求がないことが特徴となります。
基準Bにあるように統合失調症ではないので、幻覚妄想があるわけではありません。
思考や行動がよく似ているのみとなります。
こちらも柔軟性や効率性に欠ける症状は当てはまりますが、秩序や完全さにとらわれることはないように思われます。
よって秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされるという症状には当てはまらないので誤答となります。