公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問56 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問56

 

問56 女性の更年期障害について、正しいものを2選べ。

エストロゲンの分泌が増加する。

② ゴナドトロピンの分泌が増加する。

③ 顔面紅潮や発汗は不眠の原因となる。

④ ホルモン療法は抑うつに効果がない。

⑤ 欧米人に比べて日本人では肩こりや腰痛の頻度が低い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は②と③です

 

 

エストロゲンの分泌が増加する。 ×

 

エストロゲンは女性ホルモンで呼ばれるホルモンです。ウィキペディアによると、乳児期早期(1-3ヶ月)の女性思春期並に分泌量が多く、小卵胞が出没するが、2歳から思春期を迎えるまでは分泌量が減少する。2歳から思春期を迎えるまでの分泌量は女性で0.6pg/ml、男性で0.08pg/mlと女性の方が高くこれが女性の思春期初来が男性より早い原因の一つとなっている[3]。思春期に卵巣が発達し始めると共に分泌がプロゲステロンも増加し始め、第二次性徴を促進させる。更年期以降は分泌が減少する。

 

と記されています。

 

上記の通り更年期にはエストロゲンの分泌が減少します。

 

 

 

 

 

女性の更年期障害について、「エストロゲンの分泌が増加する。」という選択肢は誤りだといえるので誤答となります。

 

 

 

 

 

②ゴナドトロピンの分泌が増加する。 〇

 

小見 克夫(水沢市・産婦人科医師) 胆江日日新聞社によると、人の一生は、年齢を重ねるにつれて身体的・精神的に成長と成熟・退行(老化)の道をたどります、すなわち小児期・成熟期・老年期で、小児期と成熟期の間が思春期であり、成熟期から老年期の移行期を女性の場合特に更年期といいます。

 更年期を定義するとこうなりますが、更年期障害は「更年期に現れる多種多様の症候群で、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群」と定義されています。

 発生機序は加齢による卵巣機能の低下、特にもエストロゲン(女性ホルモン)の分泌衰退、中枢からのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌が著しく増加するなど視床下部・下垂体・卵巣系のフィードバック機能などのホメオスターシス(平衡)の維持が卵巣機能の低下とともに崩壊します。

 

と記されています。

 

 

女性の更年期障害について、「エストロゲンの分泌が増加する。」という選択肢は正しいといえるので正答となります。

 

 

 

 

 

③顔面紅潮や発汗は不眠の原因となる。 〇

 

更年期ラボによると、更年期に不眠が増加する一因として、ほてりや発汗といった血管運動神経症状が夜間に起こることで睡眠が妨げられることが考えられています。

 

と記されています。

 

 

不眠の要因は、多岐にわたり、症状自体が要因なのか、症状による不安や焦りが要因なのかはっきりしない面もわりますが、要因の一つとしては考えられるでしょう。

 

 

 

 

 

女性の更年期障害について、「顔面紅潮や発汗は不眠の原因となる。」という選択肢は正しいと考えられるので正答となります。

 

 

 

 

 

④ホルモン療法は抑うつに効果がない。 ×

 

ホルモン補充療法ガイドライン 2017 年度版によると

 

HRT による自覚的・他覚的不眠の改善度には乖離 があると考えられる.さらに,更年期女性の不眠症状は血管運動神経症状のほか,うつや不安との関連も強く 5),HRT がうつや不安を緩和することによって睡眠状態の知覚が改善され,自覚的不眠が解消する可能性がある.実際,治療開始時における Beck depression inventory score で評価したうつ症状の強さが,エストロゲンによる睡眠の改善度を予測する,つまり HRT による睡眠改善効果がうつ症状の強い群で大きかったという報告がある 6).

 

※HRTはホルモン補充療法

 

 

と記されている。

 

抑うつ状態との関連が不快睡眠との関連の強さが間接的に抑うつへの効果を示唆しています。

 

 

 

 

 

女性の更年期障害について、「ホルモン療法は抑うつに効果がない。」という選択肢は正しいとはいえないので誤答となります。

 

 

 

 

⑤欧米人に比べて日本人では肩こりや腰痛の頻度が低い ×

 

富山県済生会富山病院 第23回 更年期障害によると、

■日本人の特徴は?

それでは、更年期症状について、皆さんはどのように対応されているのでしょうか。更年期症状と治療について、40歳から60歳までの女性約4千人に行ったインターネットの調査結果によると、実際に感じている症状は「肩こり・腰痛・手足の痛み」が最も多く、「倦怠感」「急に顔がほてる」「汗をかきやすい」「イライラする」「くよくよする」「手足が冷える」-の順でした。

更年期症状といえば「急に顔がほてる」「怒りやすい」「汗をかきやすい」などをイメージされる人が多いと思いますが、欧米とは異なり、日本人女性では肩こりが最も多いという特徴がありました

 

 

と記されています。

 

 

日本人はそもそも欧米人より肩こりや腰痛が起こりやすいので、更年期の特有の特徴かどうかは定かではありませんが傾向はあるようです。更年期で日本人の方が欧米人に比べて腰痛、肩こりの頻度が低いという文献は見つけられませんでした。また、欧米人に比べて日本人では肩こりや腰痛の頻度が低いという、話題やコラムもありませんでした。

 

 

 

 

 

女性の更年期障害について、「ホルモン療法は抑うつに効果がない。」という選択肢は正しいとはいえないと考えられるので誤答となります。