公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問53 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 過去問 2019 問53 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~ 

 

 

公認心理師試験 2019

問53 

 

生活習慣病やその対応について、正しいものを2つ選べ。

心理的支援は、準備期以降の行動変容ステージで行われる。

② 腹囲に反映される内臓脂肪型肥満が大きな危険因子になる。

③ 問題のある生活習慣のリスクを強調することにより、必要な行動変容が進む。

④ メタボリック症候群の段階で行動変容を進めることが、予後の改善のために重要である。

⑤ ライフスタイルの問題によって引き起こされる疾患であるため、薬物療法の効果は期待できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は②と④です

 

 

心理的支援は、準備期以降の行動変容ステージで行われる。 ×

 

生活習慣病やその対応については、行動変容ステージモデル | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)にて、行動変容ステージモデルで説明されています。

 

上記の図のように5つのステージを通ると考えられています。

 

現在のステージからひとつでも先のステージに進むためのポイントについて、禁煙の研究から導かれたものを運動に当てはめて以下に示します。

 

  1. 無関心期への働きかけ

意識の高揚

身体活動のメリットを知る

感情的経験

このままでは「まずい」と思う

環境の再評価

周りへの影響を考える

 

  1. 関心期への働きかけ

自己の再評価

身体活動が不足している自分をネガティブに、身体活動を行っている自分をポジティブにイメージする

 

  1. 準備期への働きかけ

自己の解放

身体活動をうまく行えるという自信を持ち、身体活動を始めることを周りの人に宣言する

 

  1. 実行期と維持期への働きかけ

行動置換

不健康な行動を健康的な行動に置き換える(例:ストレスに対してお酒の代わりに身体活動で対処する)

援助関係

身体活動を続ける上で、周りからのサポートを活用する

強化マネジメント

身体活動を続けていることに対して「ほうび」を与える

刺激の統制

身体活動に取り組みやすい環境づくりをする

 

と説明されています。

 

無関心期では、「このままではまずい」と思う働きかけが重要であったり、関心期では、身体活動が不足している自分をネガティブに、身体活動を行っている自分をポジティブにイメージするなど、準備期以降の行動変容ステージだけではなく、全期間通して心理的支援が必要だと考えられます。

 

 

生活習慣病やその対応について、「心理的支援は、準備期以降の行動変容ステージで行われる。」という選択肢は正しいといえないと考えられるので誤答となります。

 

 

 

 

 

②腹囲に反映される内臓脂肪型肥満が大きな危険因子になる。 〇

 

  1. 肥満と脳梗塞 | 肥満症予防コラム | 一般社団法人 日本肥満症予防協会 (himan.jp)によると

 

 内臓脂肪型肥満が動脈硬化を発症させる理由は実に多様ですが、そのひとつとして脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインがあります。内臓脂肪が蓄積すると脂肪細胞から血栓を起こすPAI-1という物質を多く分泌され、脳梗塞などの要因になることがわかっています。加えて脂肪細胞からは、アディポネクチンという糖尿病や動脈硬化を防ぐアディポサイトカインが分泌されていていますが、内臓脂肪が蓄積するとその分泌が低下して、動脈硬化の原因となります。

 

と記されています。

 

内臓脂肪型肥満が動脈硬化の危険因子となることが分かります。

 

生活習慣病やその対応について、「腹囲に反映される内臓脂肪型肥満が大きな危険因子になる。」という選択肢は正しいと考えられるので正答となります。

 

 

 

 

 

③問題のある生活習慣のリスクを強調することにより、必要な行動変容が進む。 ×

 

①で記した

 

  1. 無関心期への働きかけ

意識の高揚

身体活動のメリットを知る

感情的経験

このままでは「まずい」と思う

環境の再評価

周りへの影響を考える

 

  1. 関心期への働きかけ

自己の再評価

身体活動が不足している自分をネガティブに、身体活動を行っている自分をポジティブにイメージする

 

とあり、リスクを強調などネガティブな面だけではなく、ポジティブな側面の協調も重要となっていることがわかります。

 

 

生活習慣病やその対応について、「問題のある生活習慣のリスクを強調することにより、必要な行動変容が進む。」という選択肢は、解答としては不十分と考えられるので誤答となります。

 

 

 

 

 

④メタボリック症候群の段階で行動変容を進めることが、予後の改善のために重要である。 〇

 

メタボリックシンドロームとは? | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)によると

 

日本では「特定健康診査・特定保健指導」の制度の中で、この考え方をとりいれています。特定健康診査は「メタボ健診」などと呼ばれることもありますが、メタボリックシンドロームだけを見つけるために行っているわけではなく、広く動脈硬化を予防するための検査が含まれます。なお、メタボリックシンドロームの診断基準と特定保健指導の基準とは少し異なります。

 

と記されています。

 

 

生活習慣病やその対応について、「メタボリック症候群の段階で行動変容を進めることが、予後の改善のために重要である。」という選択肢は正しいと考えられるので正答となります。

 

 

 

 

 

⑤ライフスタイルの問題によって引き起こされる疾患であるため、薬物療法の効果は期待できない。 ×

 

日本内科学会雑誌第107巻第2号 (jst.go.jp)によると、「肥満症治療薬の評価基準は対プラセボで 3%以上の減量と,減量により肥満に起因する 複数の疾患の改善を提案している.適応基準に は肥満症,高度肥満症と診断され,かつ食事・ 運動療法を十分行ったにもかかわらず改善が認められない場合に限定されている.」(pp263)

 

と記されています。

 

多くの生活習慣病の治療の第一選択は、食事療法と運動療法ですが、条件によっては薬物療法を併用することも選択肢にあることがわかります。

 

 

生活習慣病やその対応について、「ライフスタイルの問題によって引き起こされる疾患であるため、薬物療法の効果は期待できない。」という選択肢は誤りといえるので誤答となります。