公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

公認心理師と作業療法士の2足のわらじで働いています。私が体験した治療が上手く行った事例をプライバシーが守れる範囲で簡単に紹介していくことや、治療に関するトピックス、治療者が使いやすいツールや検査法、評価法など紹介していきたいと考えています。

公認心理師試験 過去問 2019 問18 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問18

 

  1. T. Gendlinは、問題や状況についての、まだはっきりしない意味を含む、「からだ」で体験される感じに注目し、それを象徴化することが心理療法における変化の中核的プロセスだとした。この「からだ」で体験される感じを表す用語を1つ選べ。

① コンテーナー

② ドリームボディ

③ フェルトセンス

④ フォーカシング

⑤ センサリー・アウェアネス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は③です

 

 

①コンテーナー ×

 

コンテーナー(コンテイナー)とは、対象関係論のビオン(Wilfred Bion)、によって位置づけられた治療者の態度および二者(二項)関係に関する概念です。

 

ビオンは、統合失調症患者の治療において、治療者が、患者からの投影や転移に流されたり過剰に反応したりせずに、それを受容し耐えることによって、治療関係が有効に機能するとしました。

 

このような受容的な治療者をコンテイナー(コンテイナー)といい、受容した内容(コンテインド/コンテイン)を理解し解釈した上で、患者が把握しやすい形で投げ返すことによって、患者自身がこれまで耐えることのできなかった自己の一部を意識して統合することができるようになると考えました。

 

また、ビオンは乳児と母親の関係において、情緒や思考、パーソナリティ全体を育てるために担う重要な役割に対してもコンテイナー(コンテイナー)と呼びました。

 

乳幼児は、自らの自我では耐えること不快の感情を分裂排除し、母親の中に投影します。

 

母親は、泣き叫ぶ乳幼児に対して、「痛いね」、「怖いね」、「お腹すいたね」とあやすことで、分裂排除していた不快の感情を外に投影することなく自分のものにしていきます。

 

 

「からだ」で体験される感じに注目し、それを象徴化すること、「からだ」で体験される感じを表すものではないので、誤答とします。

 

 

 

 

 

②ドリームボディ ×

 

ドリームボディとは、アーノルド・ミンデル(Arnold Mindell)によって創始されたプロセス指向心理学(Process-Oriented Psychology: POP、別名:プロセスワーク)の概念を指します。

 

ミンデルは、患者の身体症状の体験の中に、夢に見出されるのと同じメッセージがあることし、人間の背後に「ドリーミング」と呼ばれる広大な無意識体が存在し、その働きかけが「ドリームボディ」となり、身体に夢や病気を引き起こすと考えました。

 

プロセス指向心理学では、この「ドリームボディ」に付き添い、それが治療的なプロセスを展開するのをサポートしていきます。

 

「ドリームボディ」を「心」「体」に続く第3の概念とし、日常意識により抑圧、周縁化された自己などが夢や病などのチャネル(出入口)に現れた際に、それを拾い上げ、応用するワークの事を「ドリームボディワーク」と呼びます。

 

「ドリームボディワーク」の手順は、クライアントは現在患っている部位に気持ちを向ける。その部位の感覚を丁寧に感じた後に、何かのイメージが浮かんでくるまで待機する。すると身体感覚から浮上したイメージがドリームボディとなり、それが現れた意味や目的を想像するように促すといった流れとなります。

 

 

「からだ」で体験される感じに注目し、それを象徴化することが心理療法における変化の中核的プロセスだとした。この「からだ」で体験される感じを表す用語ではなく、病をただ治療すべき対象と見なすのではなく、「病や夢はそれ自身に目的を持つ」ものとして目的論立場として治療プロセスを展開しているので、誤答となります。

 

 

 

 

 

③フェルトセンス 〇

 

フェルトセンスとは、心理療法の過程である「フォーカシング」を行う際の手順に出てくる行為の一つになります。

 

「フォーカシング」は以下の6つ手順で行います。

 

1.内面に注意を向ける

目を閉じて自分の内面にゆっくりと注意を向けていきます。その過程で、最近気になっていることを思い浮かべて、「これが気になっているな」と確認します。他にも気になっている問題がないか確認し、気になっていることをピックアップしていきます。

 

2.フェルトセンスを見つける ピックアップした中から一つそのことを思い浮かべると、どんな気分になるのか。また、身体はどんなふうに感じるのかを確認します。

 

フェルトセンスとは、何かに気付くのに先立って、まだはっきりしない漠然とした感情が身体感覚として体験されることを指します。

 

「胸のあたりに、わくわくするような、さわやかな、突き抜ける青い空のような気分が広がっている」そんなふうに感じられれば、それがフェルトセンスです。

 

3.言葉を当てはめる

ピックアップしたフェルトセンスの中から、合う言葉やイメージを探して当てはめていきます。

 

4.言葉の確認        ピックアップしたフェルトセンスに合う言葉やイメージを当てはめると、身体はどんな感じがするのか確認していきます。

 

5.フェルトセンスを味あう

言葉の確認をゆっくりと行うとどんな気持ちになるのか、どんな言葉が自然に出てくるのかを確認していきます。

 

6.受け入れる

フェルトセンスを味あう際に、良い気持ちや悪い気持ち、良い言葉や悪い言葉が出てきても受け入れることが大事になります。

 

以上がフォーカシングの説明になります。その重要な過程に概念としてフェルトセンスが存在しています。

 

 

  1. T. Gendlinは、問題や状況についての、まだはっきりしない意味を含む、「からだ」で体験される感じに注目し、それを象徴化することが心理療法における変化の中核的プロセスだとした。この「からだ」で体験される感じを表す用語として正しいので正答とします。

 

 

 

 

 

④フォーカシング ×

 

③で説明したフェルトセンスをゆっくり確かめながら言葉を探って、表現する行為がフォーカシングとなります。

 

 

「からだ」で体験される感じを表す用語ではないので誤答とします。

 

 

 

 

 

⑤センサリー・アウェアネス ×

 

センサリー・アウェアネスは、エルザ・ギンドラー(1885-1961)によって20世紀初頭にベルリンで始められたものです。

 

センサリー・アウェアネスとは、呼吸・からだの動き・重力・バランス・自分そして周りの人たちや環境とのかかわりなど人間として基本的な機能や行動に注目し自然のままの形で注意深く体験していきます。

 

そうしていくことで今まで人に教えられて疑いもしなかったこと、生きていくうちに知らず知らず身に付けてきた本当の自分らしくない「条件付け」に気づき、なにが本当に自分にとって大切なのかに思いを馳せられるようになりより自分らしく生きるための選択肢の幅が広がります。

 

方法としてはボデイワークやマッサージ中心となります。

 

 

「からだ」で体験される感じを表す用語ではなく、過程全てを指す包括的な概念をセンサリー・アウェアネスと呼んでいるので誤答とします。