アウトリーチ(訪問)について(精神) ~ACT(assertive community treatment):包括型地域生活支援プログラム~
1. アウトリーチとは
・社会福祉事業において、医療・福祉関係者が直接出向いて心理的ケアとともに必要とされる支援に取り組むこと
・美術館・博物館が裾野を広げる契機として施設訪問など対外的な広報活動をすること、マイノリティの人々が自らの存在を周知させるための活動
・地方自治において住民主体のまちづくりの取り組みが盛んになりつつある中で、まちづくりに対する地域住民の声を収集したり、関心を高めたりする活動。
2.アウトリーチのポイント
・自宅を病室とみなす。医療的管理のみを目的とした訪問はアウトリーチではない。
3.ACTの活動方法
・精神保健福祉士、作業療法士、看護師、精神科医、プログラムアシスタントなど、多職種で構成され、利用者のもとへアウトリーチを行うスタッフは「ケースマネージャー」と呼ばれ、ほかの職種のスタッフと同じチームで一緒に活動する。
・「ストレングス」と「リカバリー」に力を入れて、利用者の地域生活における生活全般の支援、疾病や服薬、通院、危機介入、入院期間中の継続支援などの医療的支援、家族支援、居住支援、環境調整、他機関との連絡調整、時にはチームの就労支援担当者と共に就労に関する支援など、ケースマネージャー個人としても、チームとしても利用者に対して、包括的な支援を行う。
※理解を深めるポイント
第一:「アウトリーチのスタッフにはケアマネジメントの技法が必須である」
第二:制度内のサービスを組み合わせるだけではなく、「不動産屋に一緒出かける」「バスに乗る練習をする」「公園に花の写真を撮りに出かける」など、町にある一般の社会資源を活用する活動も「ケア計画」として組み入れる。
第三:できないところを「アセスメント」して、それを補うための「ケア計画」を策定するのではなく、利用者本人の希望や長所を「アセスメント」する。
4.ACTの特徴
①看護師、作業療法士、精神保健福祉士、精神科医などの多職種によるチームアプローチ
②スタッフ1人に対する担当利用者は10名程度
③チーム全員で一人ひとりの利用者のケアを共有
④利用者の「生活の場での支援
⑤必要なサービスをチームが直接提供
⑥1日24時間・週7日体制
⑦期限を定めない無期限のサービス
5.ACTの対象
頻回入院、長期入院、未治療者、長期のひきこもり、医療中断者など、既存のサービスへのアクセスや継続が難しい人々を対象としている。
6.ACTのデメリット
①多職種チームで活動する場合、地域生活支援においては大きな役割を担っている精神保健福祉士の訪問は計算外であること
②利用者との自宅以外でのコンタクト、利用者が入院中の病棟への訪問、家族支援、就労支援、ほかの支援関係機関との調整会議や自宅以外でのケア会議などは診療報酬上算定できない
ACTの問題
24時間対応体制の加算の対象は看護師のみ
7.訪問看護の機能
1、薬の処方や提供に関する医療(病院やクリニック)・主治医との連携
2、疾病と服薬を利用者が管理するための支援
3、個別の支持的療法
4、危機介入
5、身体的健康に関する支援
6、清掃に関する支援
8.作業療法士の訪問支援
①対象者の自律とリカバリーを目標に、
②ほかの職種とは異なる関係性をもつOTが、
③対象者と家族との構造を明確化し、
④作業を利用したり心理教育や環境調整を行ったりすることにより、
⑤対象者の生活における緊張を緩和し、
⑥社会生活維持に必要なゆとりを生み出し
⑦ほかのサービスや就労へとつなげ
⑧生活の安定を獲得するもの
9.訪問における作業療法士の役割
①日常生活の安定化に向けた支援:日常生活自律に向けた練習、サービスの活用に関する助言経済的な状況の確認、相談、助言
②対人関係の安定化に向けた支援:家族や同居者などの要望の確認、相談、助言、関係調整
③対象者や家族への心理教育
④身体的健康維持に向けた支援:生活習慣病予防に向けた運動負荷に関する相談、助言
身体疾患に関する予防、健診、通院に関する助言
⑤病気や症状の管理に向けた支援:服薬自己管理に向けた練習。通院服薬などに関する確認や、相談、助言、十分な説明
⑥居住環境の安定化に向けた支援:居住環境の改修、補修に向けた助言や援助、住まいに関する確認、相談
⑦各種社会資源の情報提供
⑧就労や社会参加への意欲と具体的準備の確認、相談、助言
⑨緊急時の危機介入と予防
⑩緊急時に関連する関係機関との調整、クライシスプランの作成、症状再燃時の相談