公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問39 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019  問39

 

学校生活で悩みを持つ思春期のクライエントとの面接に関して、保護者への情報提供に関係する対応として、不適切なものを1つ選べ。

① 事前に、秘密や記録の扱いについて関係者と合意しておく。

② 保護者から情報提供の依頼があったことをクライエントに知らせ、話し合う。

③ クライエントの意向にかかわらず、秘密保持義務を遵守するために、保護者からの依頼を断る。

④ 相談面接において、特に思春期という時期に秘密が守られることの重要性について、保護者に説明する。

⑤ 保護者に情報提供することで、保護者からの支援を受けられる可能性があるとクライエントに説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は③です

 

①事前に、秘密や記録の扱いについて関係者と合意しておく。 ×

公認心理師現任者講習テキスト/日本心理研修センター」を参考にして述べていきます。

 

子供の問題解決には、さまざまな視点から多面的な情報収取が必要であり、担任教師など特定の援助者だけではなく、子どもの周りにいる援助者(例 担任教師、保護者、SCやSSW)がそれぞれの立場や専門性を活かして、子どもの情報を集め、それを踏まえて子どもの援助の計画と実践に役立てることが必要となっています。

 

そして、援助チーム内において、情報の取扱いに関して共通理解に基づいて対応がなされるよう、明確かつ具体的なルール作りが求められている。(秀島ゆかり,2017 「秘密保持」と「手続きの透明性」を巡って。臨床心理学17‐1)

 

と述べられています。

 

 

上記から事前に、秘密や記録の扱いについて関係者と合意しておくことは必要で重要な手順と考えられ適切といえるので誤答とします。

 

 

 

 

 

②保護者から情報提供の依頼があったことをクライエントに知らせ、話し合う。 ×

 

情報を開示する場合はクライエントの同意が必要であること、同意なく開示する場合は、法律によって義務づけられている場合または法律上認められている場合に限ると明記されている(APA,2017)。

 

秘密保持の例外状況は

1. 明確で差し迫った生命の危機があり、攻撃される相手が特定されている場合

2. 自殺等、自分自身に対して申告な危害を加えるおそれのある緊急事態

3. 虐待が疑われる場合

4. そのクライエントのケア等に直接関わっている専門家同士で話し合う場合(相談室内のケースカンファレンスなど)

5. 法による定めがある場合

6. 医療保険による支払いが行われる場合

7. クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判等によって提起した場合

8. クライエントによる明示的な意思表示がある場合

 

上記の8つとされています。

 

今回のケースは該当しません。

 

実際に臨床場面でこのようなケースに至ることは少なくないと思います。

 

私の場合は、後々クライアントとの関係性が崩れてしまうリスクがかなりあると考えるので、基本的にはクライアントに情報提供して良いか聞きますし、保護者に聞かれた時点で、クライエントの同意を得ないと情報提供できないので、本人に聞いてみて良いか聞きます。

 

保護者も子どもとの関係を大事にしていると思うので、そこも勝手に子どもに情報提供を求められたことを言わないように注意します。

 

 

護者から情報提供の依頼があったことをクライエントに知らせ、話し合うことは正しいといえるので誤答します。

 

 

 

 

 

③クライエントの意向にかかわらず、秘密保持義務を遵守するために、保護者からの依頼を断る。 ×

 

法律上問題はないのです。

 

しかし、保護者との協力や連携は思春期のクライエントを治療していく上で重要だと考えます。

 

クライエントの意向にかかわらず、秘密保持義務を遵守するために、保護者からの依頼を断ることは、クライエントの利益、有益を阻害するリスクがあると考えます。

 

保護者がなぜ依頼したのか、クライエントはどう感じるのかを慎重に考えつつ、関わっていくことが重要だと思います。

 

 

クライエントの意向にかかわらず、秘密保持義務を遵守するために、保護者からの依頼を断ることは、適切ではないと考えるので正答とします。

 

 

 

 

 

④相談面接において、特に思春期という時期に秘密が守られることの重要性について、保護者に説明する。 ×

 

思春期あたりの子をもつ保護者は、子どもにわからないように情報を聞くことが当たり前のように感じる人も少なくないと思います。

 

しかし、思春期は一人の人間として認められないこと、扱われないことに関してかなり美敏感な時期といえます。

 

クライエントとカウンセラーとして適切な関係、信頼関係を保つためにも秘密が守られることが重要だということを、しっかり保護者に説明することも大事と考えます。

 

 

相談面接において、特に思春期という時期に秘密が守られることの重要性について、保護者に説明することは適切とと考えるので誤答とします。

 

 

 

 

 

⑤保護者に情報提供することで、保護者からの支援を受けられる可能性があるとクライエントに説明する。    ×

 

③で述べた通り保護者との協力や連携は思春期のクライエントを治療していく上で重要だと考えます。

 

思春期のクライエントだと保護者に知られたくないことも多々あると思いますが、

 

カウンセラーとして、保護者に情報提供することで生じるメリットを伝えて同意を得ることは、クライエントの利益に繋がるので、説明することは重要と考えます。

 

 

保護者に情報提供することで、保護者からの支援を受けられる可能性があるとクライエントに説明することは適切と考えるので誤答とします。