公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

公認心理師と作業療法士の2足のわらじで働いています。私が体験した治療が上手く行った事例をプライバシーが守れる範囲で簡単に紹介していくことや、治療に関するトピックス、治療者が使いやすいツールや検査法、評価法など紹介していきたいと考えています。

公認心理師試験 過去問 2019 問17 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問17

 

治療者自身が相互作用に影響を与えることを含め、治療者とクライエントの間で起きていることに十分注意を払うことを何というか、最も適切なものを1つ選べ。

① 自己開示の活用

② 治療同盟の確立

③ 応用行動分析の適用

④ 関与しながらの観察

⑤ 自動思考への気づき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は④です

 

 

①自己開示の活用 ×

 

カウンセリングをするときなど、治療者と援助者の関係になる際、基本的にあまり自己開示しません。

 

しかし、現実的に全くしないこともないです(必要性、意図や狙う効果があることが前提で)。

 

転移、逆転移、陰性感情、陽性感情がセラピストに発生した際、その過程や発生条件を客観的に伝えることもあります。

 

 

「治療者自身が相互作用に影響を与えることを含め、治療者とクライエントの間で起きていることに十分注意を払う」必要はもちろんあるのですが、今回は「最も適切なものを1つ選べ。」との問いで、他の設問の方がより注意を払う必要があると思うので誤答としています。

 

 

 

 

 

②治療同盟の確立 ×

 

治療同盟の確立は、困りごとや解決すべき問題に対して、治療の目標や取り組むべきことを決めて、共同関係を形成することです。

 

 

治療者自身の経験や見解を述べることもあるので、相互作用に影響を与えることは無いとはいえないですが、客観的に物事を把握していくことが重要になると思われるので、誤答とします。

 

 

 

 

 

③応用行動分析の適用 ×

 

応用行動分析とは、実験的行動分析によって見出された原理や法則を、人間の問題行動の分析と修正を目的として応用した方法論を言います。

 

応用行動分析では、以下の5つの手法を用いて行う。

 

①プロンプト:望ましい行動を引き出すために、行動の指示である弁別刺激と一緒に用いられる補助的な刺激。

 

②シェイピング:段階付けをしてスモールステップで目標とする行動に少しでも近い行動を強化しながら目標とする行動を形成する手法。

 

③課題分析:一連のスキルを指導する場合に前もって、そのスキルがどのような動作によって構成されているかを分解する作業。

 

④順行連鎖:ひとつのスキルのタスクを前から順番に教えていく方法。出来なくなったところで援助していく。

 

⑤逆行連鎖:ひとつのスキルのタスクを後ろから順番に教えていく方法。最初援助し対象者ができるところからやってもらう。

 

 

治療者と一対一で課題を行うことがあるので、応用行動分析では治療者とクライエントの間で影響しあうことは伴いますが、二者関係の影響より間にある課題、環境の変化からの影響が強いので、誤答とします。

 

 

 

 

 

④関与しながらの観察 〇

 

 

公認心理師追加試験(北海道試験)の問14の関与しながらの観察の正答は「観察者は自身が一つの道具としての性質を持っており、自らの存在の影響を排除できない。」とのことでした。

 

 

サリヴァン(Sullivan, H.S.)の関与しながらの観察は、自然科学の観察において、観察者は対象に影響を与えない測定機器であることが原則であるが、その対象が人間である場合、観察者はその場に存在することによってすでに対象に何らかの対人的作用を及ぼしているため、その事実を認識した上で観察をせざるを得ない。とのことでした。

 

サリヴァンは臨床面接の場では体験の歪曲が生じやすく、未解決の過去の対人関係が反復されやすいと感じ、対人関係の場と切り離した個性の客観的観察は不可能であると考え関与しながらの観察が中心としました。

 

関与しながらの観察の具体的な方法は、治療者が患者の日常生活に参加して時間を共有しながら、患者の性格や行動パターンを明らかにしていく方法です。

 

 

治療者自身が相互作用に影響を与えることを含め、治療者とクライエントの間で起きていることに十分注意を払うことを何というか、最も適切なものを1つ選べ。

 

 

 

 

 

⑤自動思考への気づき ×

 

自動思考は認知療法で使われる概念で刺激に対して意識せずともに浮かんでくる考えやイメージのことです。

 

人間の思考の根底にある信念・価値観・人生観などのことを「スキーマ」と呼びます。

 

この「スキーマ」は私たちが物事をどう解釈するかといった認知バイアスに影響します。

 

自動思考は認知行動療法的な関わりで治療していきますが、スキーマのデメリットに気付くように話をして、自覚しても、考え方が変えるのは自分自身の力になります。スキーマを変えるには、自身で考え、気づいていくという作業が必要になります。

 

そのため、セラピストはクライアントをガイドすることは出来ても、スキーマを変えるのはあくまでクライアントの能動的な行動が必要になります。

 

 

治療者自身が相互作用に影響を与えることはありますが、セラピストの思考が強く影響するものではないので、誤答とします。