公認心理師試験 過去問 2019 問22 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019 問22
問22 DSM-5の心的外傷後ストレス障害について、正しいものを1つ選べ。
① 児童虐待との関連は認められない。
② 症状が1か月以上続いている必要がある。
③ 診断の必須項目として抑うつ症状がある。
④ 眼球運動による脱感作と再処理法の治療効果はない。
⑤ 心的外傷の原因となる出来事は文化的背景によって異なることはない。
解答と解説
正答は②です
①児童虐待との関連は認められない。 ×
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準(DSM-5)は以下の通りです。
<前提>
A. 生命を脅かされるような出来事(戦争、災害、犯罪、拷問・虐待等)、性的暴力(レイプ、近親姦等)に曝される。
1.トラウマ(心的外傷)的出来事を直接体験する。
2.他人に起こったトラウマ的出来事を直に目撃する。
例)戦場で隣にいた兵士の頭が吹っ飛ぶのを見る。
母親が父親に暴力を振るわれているのを見る。
3.トラウマ的出来事の細部を強制的に繰り返し見させられる。
細部の例:拷問の写真や映像。人が処刑される場面の写真や映像。
<トラウマ後に起こる症状>
B. 侵入:以下の内のいずれか一つ
1.繰り返し思い出される苦痛な記憶
2.繰り返し起きる悪夢
3.フラッシュバック:トラウマの記憶が無意識に思い出されかつそれが現実に起こっているかのような感覚が非常に激しい状態。
C. 回避:トラウマに関連する刺激の持続的な回避。以下の内一つもしくは両方。
1.記憶、思考、感情の回避
2.人、場所、会話、行動、物、状況の回避
D. 認知と気分の陰性症状:以下のうち二つ以上
1.トラウマ的出来事の重要な側面の想起不能
2.自分自身や他人、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想
例:「もう誰も信じられない」
3.自分自身や他者への非難につながる、トラウマ的出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識
例:「わたしがこうなったのはすべて親のせい」
4.慢性化した抑うつ状態
E. 過覚醒:睡眠障害と他一つ以上
2.集中困難
3.易刺激性:ちょっとした刺激で以下のような反応がおこる過剰な怒り、自己破壊的行動、過度の警戒心、過剰な驚愕反応
F. 症状(B、C、D、E)の持続が一か月以上続くこと。
以上がPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準となります。
生命を脅かされるような出来事に虐待が挙げられており、性的暴力に近親相姦が挙げられています。
また、他人に起こったトラウマ的出来事を直に目撃する例に母親が父親に暴力を振るわれているのを見ると挙げられています。
診断基準から読み取れるように、PTSDは児童虐待によって起こることは少なくない疾患となりますので誤答となります。
②症状が1か月以上続いている必要がある。 ○
①に記述した診断基準の中に
F. 症状(B、C、D、E)の持続が一か月以上続くこと。
とある通り、1か月以内に消失する場合は、ASD(急性ストレス障害)で症状が1か月以上続くとPTSDと診断されるので、正答となります。
③診断の必須項目として抑うつ症状がある。 ×
①で説明した通り
診断の必須項目として抑うつ症状はないので誤答となります。
④眼球運動による脱感作と再処理法の治療効果はない。 ×
眼球運動による脱感作は略称EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)と呼ばれ1989年にアメリカのフランシーン・シャピロ(フランセス・シャビロ)により開発された心理療法です。
フランシーン・シャピロは、戦争による後遺症でPTSDやアルコール依存症、薬物依存に対する治療にEMDRでの治療を施しました。
EMDRの進め方は以下の順です。
1.説明とリラクゼーションの体得
2.ターゲットの特定と明確化
3.EMDRによるトラウマの処理
4.クールダウン
5.EMDR効果の評価
ちなみに系統的脱感作法と名前が似ていますが、こちらは、考案者は南アフリカで戦争神経症の治療を行っていた精神科医、ジョセフ・ウォルピが考案した心理療法です。
系統的脱感作法は、古典的条件づけを理論的基礎とする。不安の対象となる状況・モノに対して、それらを対象者の主観的刺激の強弱によって階層化し、脱感作と呼ばれるリラクセーション(主に筋弛緩などを用いる)を用いて、十分にリラックスした状態で階層的に低い不安対象に暴露してゆく技法となっています。
似ていますが、混同しないように注意が必要です。
眼球運動による脱感作と再処理法はPTSDの治療範囲になりますので誤答となります。
⑤心的外傷の原因となる出来事は文化的背景によって異なることはない。 ×
その文化によって、他の文化圏であれば何でもないような行動が、激しい侮辱にあたるということは少なくありません。
宗教的な要因で差別的な事柄は世界中で多く見受けられます。
戦争時の日本も他国に対しての認識により屈辱的な出来事に対して、トラウマと呼べる出来事を経験していると推測されます。
心的外傷の原因となる出来事は文化的背景によって異なると考えられるので誤答となります。