公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

公認心理師と作業療法士の2足のわらじで働いています。私が体験した治療が上手く行った事例をプライバシーが守れる範囲で簡単に紹介していくことや、治療に関するトピックス、治療者が使いやすいツールや検査法、評価法など紹介していきたいと考えています。

統合失調症の行動特性

 

 

統合失調症の行動特性を紹介します。

 

 

昼田源四郎さんの著を主に参考にして臨床で感じたことを書き足していきます。

 

 

 

 

 

 

1.一時にたくさんの課題に直面すると、混乱してしまう

 「統合失調症者は、まずどれをしなければならないのか、どれは後からでいいのかといった判断がひどく苦手である。注意(関心)の幅が狭く、全体的に注意を配分することが出来ず、状況に合わせて複数の情報の中から自分にとって現時点で重要な情報を選択し、統合してゆく能力に問題がある。つまり、注意の深さ・注意の配分・注意の持続などの注意機能や、雑然とした多くの情報の中から、自分にとって意味のある情報だけを選択的に認知するフィルター機能が障害されている。」

 

と言われています。

 

BACS‐J(統合失調症の認知機能検査)の統合失調症の平均点からすると、ワーキングメモリが低下しやすい特徴があるので、理由として大きいですが、注意機能の低下による記名力不足は、薬剤の影響が大きいので、2018年現在では、出ている薬剤の副作用の少なさと、多剤使用による治療が減ってきていることから、未治療期間の長さによって程度が大きく変わってきますし、治療が早く使用薬剤も少なければその症状も軽いものになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.受身的で注意や関心の幅が狭い

 統合失調症者は、注意機能やフィルター機能の障害により、また後に述べる統合能力や脈絡利用の障害のために、情報の処理容量が小さく、少し混乱した状況に直面するとたちまち情報の入力過剰をまねき、その結果として、混乱しまとまらない状態(破綻状態)が起きる。このため、関心の狭さや、「無為」「自閉」「感情鈍麻」などの症状は、必ずしも全てが疾病の直接的な症状ではなく、限られた情報処理能力に負担をかけないという、積極的な生の戦略がふくまれているのであり、それが統合失調症者の生活様式を形作っているのではないかと推測される。

 

と言われています。

 

注意や関心の幅が狭いと周りが感じるのは、幻覚・幻聴・妄想等の陽性症状で周囲への注意が向けられないため考えがまとまらず疲れやすいためでしょうかね? 薬剤で症状が抑えられていても、薬剤の影響で伝達物資の量が抑えられているので、思考の7スピードは鈍くなります。

 「受身的」であったり「無為」であるのは、人によって至る理由は様々あると思います。疲労しやすさ等の症状からの直接的な理由ももちろんありますが、統合失調症になると能力が落ちます。薬剤でも落ちます。なにか仕事や生活活動行っていても、見落としが多かったり、ミスが多かったり、遅かったりと、他人に卑下されることが多い生活が想像できます。そういう生活から自尊心が失われていった結果なることも考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.全体の把握がにがてで、自分で段取りをつけられない

 物事を全体的・統轄的に把握したり、各部分を組織して一つの全体に統合していったり、という仕事が不得手である。これは、注意が断片的で、その注意の向け方にも規則性が無く、注意の範囲も狭いという所見とも関係する。一つのことにこだわり、全体に目を配ることが出来ないという統合失調症の行動特性がある。また、統合能力の問題や時間性の障害から段取りをつけるということが苦手であるとされている。

 

 

と言われています。

 

これも薬剤による思考スピードの低下、TMT検査(注意機能の検査)でも健常者と差が出ていることから、注意機能が純粋に落ちると言われてますが、運動療法や注意機能訓練で改善するという報告もあります。統合失調症になると、周囲に恐怖心や不安を感じ日常生活でも引きこもりがちになったり、入院して治療を行う上でも昔はベッドからほとんど動かさないようにすることも多々ありますので、単純に注意機能を日常で使う機会を奪われ、衰えていることも考えられます。なので、沢山使う訓練を行うことが大事になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.話や行動に接穂がなく唐突である

 統合失調症のひとたちとの会話で接穂のなさを感じるのは、彼らが相手の心の動きを読むことが苦手なことや、脈絡を解読することが下手なこと、間や距離の取り方にも問題があるためではないかと考えられている。また、他人と対したときの一般的なスタイルとして、挨拶や世間話からはじまり、おもむろに用件に入り、また挨拶という制度化された身づくろい言語でしめくくる。これから話題としようとすることについての一定のオリエンテーションを与えてから本論に入るという、習慣化されたコミュニケーションを統合失調症者がしばしば無視し、会うといきなり用件を切り出してきたり、つなぎの言葉を省いたりするために、彼らの話は接穂がなく唐突な感じとなってしまう。

 

と言われています。

 

焦っている状況だと誰でも唐突になりますね。統合失調症の症状の影響で焦燥感があると唐突になったり、相手にどう思われるかなど、相手の状況考えられないこともあります。統合失調症で再発を何度も繰り返してしまい人格水準やIQが下がってくること同様の症状が当てはまりますが、分けて考えていかなければならないところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5.曖昧な状況がにがて

 統合失調症の人たちが曖昧な状況が苦手で、場にふさわしい態度を取りにくいのは、彼らが文脈や常識といったものの利用に障害をもっているからだと考えられている。

 

と言われています。

 

これは全員当てはまらないですね。常識の利用に障害があるというのはかなり乱暴な表現ですね。上記の注意やワーキングメモリ、焦燥感による影響もあると思います。あとは、統合失調症は一説には知的障害や自閉症スペクトラム障害などの発達障害があると10倍~20倍発症しやすいと言われているので、生まれ持った障害特性と混合しているようにも思えます。統合失調症で再発と多剤を繰り返すとIQと人格水準が落ちるのでより混合しやすいところだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6.場にふさわしい態度をとれない

 これも、彼らが場面の脈絡を解読することが下手だということに由来している。融通がきかず、病的幾何学主義もみられるが、これらは病気の症状というより、選択枝を切り詰め、静的な単純化した世界像の元に適応を容易にしようという、彼らの生の戦略と考えられる。

 

と言われています。

 

これも5の説明に近いとことですね。入院が長くなり、いっぱいいっぱいになると周りにどう思われるか気にする余裕がなくなるのも理解できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7.融通がきかず、杓子定規

 融通をきかせるということは、状況に応じた臨機応変の態度をとるということであり、習慣的・定型的な判断や行動では処理できなくなった状況を意味している。統合失調症者はパターン化された定石は使えるようになるが、応用問題がなかなかできないという特性がある。

 

 

と言われています。

 

 

これはワーキングメモリと遂行機能の低下の影響が大きいと思います。これも認知リハビリテーション(NEARなど)訓練で改善が見込めると部分です。

 

 

 

 

 

 

 

 

8.指示はそのつど、一つひとつ具体的に与えなければならない

 治療者のとるべき態度として①生活に密着した具体的な指示だけが、生活に具体的な行動となってみられるため、指示は具体的でなければならない②治療者の「どちらでもよい」「よいと思うほうを選びなさい」というような曖昧な態度は、患者を迷わせ、混乱させ、選択を回避させることが多いため、指示する場合には、治療者は「自身のある態度」で断定的に指示しなければならない③時期を失せず働きかえることが必要である④同じ働きかけを根気よく繰り返しているうちにその効果がみられる、というものである。これらは、統合失調症の社会治療を実践していくうえで、非常に重要な指針となる。

 

 言われています。

 

 

ワーキングメモリ、遂行機能の低下の影響に加え、統合失調症で社会で卑下され自尊心が低下した結果として起こることだと思います。自尊心を回復されるためにもその人ができる事、価値が高まるよう技能を身につけるなど自信をつけることが大事だと思います。

 

 

 

 

 

9.形式にこだわる

 頑固に形式や世間体にこだわって、いかにも固いという印象を受けることがある。名目・世間体・評価に拘泥し、外面的な形式にこだわるのは、自我境界の病理の一つのあらわれであるとも考えられている。これらを身にまとうことで、自我境界・自我同一性の曖昧さを補償しているのだと考えられる。

 

と言われています。

 

陽性症状から自分を守るために、決め事をしてしまうことがあります。言葉でぬぐうのを難しいので一個一個体験を通さないと考えを変えるのは難しい部分です。

 

 

 

 

 

 

 

10.状況の変化にもろい、特に不意打ちに弱い

 状況が変化する場面でしばしば破綻し、それは能動型に人でも受動型の人でも変わりが無いが、能動型の人がみずから生活圏を広げ、まるで自分から破綻する状況を作り出してゆくように見えるのに対し、受動型の人の場合は、周囲の変化についていけず混乱して破綻してしまうという違いがある。また、この特性は、かたくなで融通のきかない人格構造と密接に関係しており、状況の変化・危機が統合失調症者の自我の危機へと直結するところに、彼らの抱える問題がある。

 

と言われています。

 

これも陽性症状からの防衛で作ったルールの影響は少なからずあると思います。自分の中の常識が変わるような一個一個の体験に大きなストレスがかかりやすいのでその理解とケアが必要になります。入院治療中は看護師が一番観察して注意して配慮とケアを行う部分でもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

11.慣れるのに時間がかかる

 分裂病の人たちは、精神的な緊張が高く、自分の生活の仕方を変えようとしない傾向が強い。

 

 

と言われています。

 

これも10と同じような話ですね。

 

 

 

 

 

 

 

12.容易にくつろがない、常に緊張している

 あまりにも緊張が強いために、心を静かにゆるがせることができず、関心が一事に固着し全体への目配りができていない。心身ともに固く身構えているために、かえって臨機応変で自在な動きがとれず、隙だらけな状態となっており、不意打ちには手も無く一本とられてしまう。

 

 

と言われています。

 

これは、妄想・幻聴の内容で人に狙われている。殺されるかもなどの内容が多いことも影響されていると思います。服薬治療で幻聴が治まっても、長くそういう症状にあった人はこの恐怖心をぬぐうのに時間がかかるし、人と関わりたくないという気持ちが消えない人も多い印象があります。

 

 

 

 

 

13.冗談が通じにくい、堅く生真面目

 冗談は言葉の遊びであり、心のゆとりや余裕がなければならないため、あまりに緊張しすぎた状況では冗談は生まれない。また、冗談は虚言のはざまで生まれるため、現実見当識が要請され、文脈に応じた伴時的意味の読解が必要とされる。これらは統合失調症が苦手としているものばかりである。

 

 

と言われています。

 

その通りだと思います!

 

 

 

 

 

 

 

 

14.現実吟味力が弱く、高望みしがち

 統合失調症はでは、現実吟味力の低下が認められる場合が多いが、これは世界と自己自身に関しての、ある種の認知障害と考えられる。

 

 

と言われています。

 

 

ある種の認知障害というのは、遂行機能、計画性の部分ですね。先のことを考える能力が落ちるので、これも認知リハビリテーション(NEARなど)訓練での改善部分です。

 

 

 

 

 

 

 

 

15.世間的・常識的な思考・行動を取りにくい

 統合失調症者の、物の見方や考え方が、他の人たちのそれと異なることがあるため、周囲の人々にしばしば奇異な印象を与えてしまう。

 

と言われています。

 

これも陽性症状から自分を守るための決め事をや陽性症状事態の影響。そして周囲のからどう思われるか気にする余裕のなさですね。

 

 

 

 

 

 

16.他人の自分に対する評価には敏感だが、他人の気持ちには比較的鈍感

 統合失調症では共感能力が低いために、表情や声の調子から相手の感情を知ることが難しい。彼らは情緒的な刺激状況、とりわけ相手の感情に気を遣ったり、腹をさぐり合ったりしなければならないような状況は苦手で、こうした状況では破綻しやすい。

 

 

と言われています。

 

これは、表情認知や対人技能の乏しさからです。あまり人と接したくなくなる体験を後天的に受けやすいことも影響していると思います。SCITなど社会認知や対人認知のトレーニングで改善できる部分です。

 

 

 

 

 

17.自分を中心にものごとを考えがち

 世界というものは、自分が見ているようなパースペクティブで他人にも見えているはずだと信じきっているようで、人それぞれに違った見え方をしているなどとは思ってもみないかのようである。

 

と言われています。

 

これも16と同じところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

18.視点の変更ができない

 統合失調症の人たちの思考は、視点の変更ができにくく、視点の柔軟さに欠けており、日常生活の場面でも一方的な思い込みに陥りやすいが、このことは彼らが妄想を抱きうること、妄想を容易に修正できないこととも関係していると考えられる。

 

 

と言われています。

 

これは15と同じ理由ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

19.話に主語が抜ける

 分裂病者の言語は述語優位であり、幻聴や妄想などにも、この述語優位性が端的にあらわれている。

 

 

と言われています。

 

これはよくわからないです。本当に述語優位なのか調べてみたいです。

 

 

 

 

 

20.あいまいな自己像

 自己像についての曖昧さは、現実吟味力の低さを反映している。自我の形成が十分にできていないため、素直すぎたり、頑固で融通がきかなすぎたりする面が見られる。また、彼らの社会的な役割意識もひどく曖昧な場合が多い。

 

と言われています。

 

統合失調症者が生育に問題があったり、発達に問題があるからなりやすいのか、統合失調症だからそうなのかが難しい部分ですが、正常発達や発達過程を問題なく経過すれば統合失調症でも自己像ははっきりしているはずです。

 

 

 

 

 

 

21.秘密をもてない

 統合失調症が、自分の動静ないし思考が周囲によって探られているという感じ方をしているのは、彼らが本来自分の秘密を持ちにくい人たちであるからである。自分と他人を分かつ、はっきりした境がないのである。

 

 

と言われています。

 

古くから統合失調症は、自分と他人を分ける境目が乏しく、ほかの人に言っていることも自分に言われているように感じでしまうと言われています。しかし秘密をもてないのは、単純に遂行機能、計画性の低下により欲求に即物的になりやすいからだと思います。

 

 

 

 

 

 

22.あせり先走る

 統合失調症は、自分の置かれた現実を飛び越えて、いつも先へ先へと先走ろうとする。この傾向は、病状が回復し社会復帰している状態においても認められる。

 

と言われています。

 

これも単純に遂行機能、計画性の低下により欲求に即物的になりやすいからだと思います。

 

 

 

 

23.同じ失敗を何度もくりかえす

 分裂病者がなかなか体験から学習しないという所見は、彼らに慣れの現象が起きにくいという点とも関係しており、同じ失敗を繰り返す場合、全く同じ状況というのはありえないわけであるから、過去の失敗との共通の状況であるにも関わらず、過去の体験を生かすことができないのである。

 

 

と言われています。

 

 

これは統合失調症の認知機能障害の影響が強いと思います。特に、記憶関連の言語記憶、ワーキングメモリあたりです。これも認知リハビリテーション(NEARなど)訓練での改善部分です。

 

 

 

 

 

 

24.リズムにのれない

 分裂病者は、正常者と比較し、反応時間が有意に遅いことが知られている。このような分裂病者の独特ののろさが、リズムにのれないことの原因である。

 

と言われています。

 

 

これは統合失調症の特性というより、抗精神病薬の影響が強いと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上です。

 

少し古い文献を参考にさせていただいたので、現在では考え方が変わっていたり、解明されてきている部分も多くなってきたなと感じます。

 

 

 

精神疾患はまだまだ解明されていないことも沢山あるので、研究をどんどんすすめていかなければいけない分野なので、新しい情報にも今後目を向けていきたいです。