公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

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公認心理師試験 過去問 2019 問8 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問8 

 

ライミングについて、正しいものを1つ選べ。

① 間接プライミングは、主にエピソード記憶研究で用いられる。

② 直接プライミングは、先行情報と後続情報の間に意味的関連性が強い場合に生じる。

③ プライミングは、絵などの画像刺激では生じず、単語などの言語刺激のみで生じる。

④ プライミングには、先行情報が後続情報の処理を促進するだけでなく、抑制する場合もある。

⑤ プライミングは、先行情報が閾下呈示された場合は生じず、閾上呈示された場合のみで生じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は④です

 

 

①間接プライミングは、主にエピソード記憶研究で用いられる。 ×

 

ライミングとは、事前にある刺激を知覚することにより、ある分野の知識や概念などが活性化される現象で、プライミングは日本語で先行刺激呈示効果といいます。

 

特定の知識などを活性化させるだけでなく、活性化された知識と同じカテゴリーの知識も同時に活性化されると考えられています。

 

間接プライミングとは、異なる2つの刺激を同時に提示した場合に、対象の処理が促進される効果のことを言います。

 

例として、プライマー(先行刺激)として「トラ」が提示された際に、ターゲット(後続刺激)として「ライオン」が提示された場合には、「ヒマワリ」が提示された場合と比較して、ターゲットの語彙判断に要する時間が有意に速くなる、などによってプライミング効果が評価されています。

 

記憶の分類は

宣言的記憶意味記憶エピソード記憶

宣言的記憶:技の記憶・プライミング・古典的条件づけ

 

と分けられ、プライミングは無意識の潜在記憶が情報処理過程や記憶の定着などに影響することが明らかになったことで注目されています。

 

 

間接プライミングは、主にエピソード記憶研究ではなく、潜在記憶研究で用いられているので、誤答となります。

 

 

 

 

 

②直接プライミングは、先行情報と後続情報の間に意味的関連性が強い場合に生じる。 ×

直接プライミングとは、プライマー(先行刺激)とターゲット(後続刺激)とで同じまたは似た刺激が繰り返されることで起こるプライミングのことを指し、反復プライミングとも呼ばれています。

 

有名な研究方法でいうと、例として、プライマー(先行刺激)を「ライオン」と提示し、その後、「ラ□オ□」のような単語完成課題を行わせると、プライマー(先行刺激)を提示されている群は、提示されていない群と比較して有意に単語の正答率が向上したり、反応時間が速くなったりします。

この際、プライマー(先行刺激)を提示されている群は、単語を意識的には想起しておらず、潜在的な想起過程において起こっているおり、非宣言的記憶の過程に分類されます。

 

ライミングの効果は、言葉だけではなく、絵など象徴となるものや、連想できるものでも発生します。

 

 

「直接プライミングは、先行情報と後続情報の間に意味的関連性が強い場合に生じる」との問いですが、直接プライミングは、宣言的記憶である意味記憶(意味的関連性)に限らず、非宣言的記憶発生するため誤答となります。

 

 

 

 

 

③プライミングは、絵などの画像刺激では生じず、単語などの言語刺激のみで生じる。 × 

上記の②で述べた通りプライミングの効果は、言葉だけではなく、絵など象徴となるものや、連想できるものでも発生します。

 

 

よって誤答となります。

 

 

 

 

 

④プライミングには、先行情報が後続情報の処理を促進するだけでなく、抑制する場合もある。 〇

 

ライミング効果とは、プライマー(先行刺激)の処理によって、ターゲット(後続刺激)の処理が促進または抑制される効果と定義されています。

 

認知症の訓練や脳トレでお馴染みの、緑色で書かれた「赤」という文字の色を答える課題。いわいるストループ課題では、文字と色という同時に刺激が入ることで処理速度が遅くなります。

 

10回クイズなど、最初にピザと10回言わせて、肘を指さして「ここは?」と尋ね、膝と答えさせると、間違えやすいor反応時間遅くなりやすいです。よって、プライミングには、先行情報が後続情報の処理を促進するだけでなく、抑制する場合もあります。

 

 

よって正答となります。

 

 

 

 

 

⑤プライミングは、先行情報が閾下呈示された場合は生じず、閾上呈示された場合のみで生じる。 ×

 

Reccuglia&Phaf(1997) は、閾下プライムの効果は、判断者の感情経験ではなく反応の符号化の促進という形で影響すると述べており、表情よりも感情語をプライムとして用いたときの方が、プライム効果は大きくなると報告しています。

 

一方で、小川時洋ら(1998年)は、閾下刺激の効果は元々非常に微妙なものであり、またこれらの研究で用いられているパラダイムも様々で、それらの相違を超えた統一的なガイドラインはまだ確立されていないと報告しています。

 

従来から閾下刺激の効果については批判があり(e.g.,Merikle,1982)、また感情に対する効果を扱った類似の研究においても、不快刺激のみが有効であったもの (大平, 1996)、バイアスの方向が先行刺激の誘意性とは反対になる報告(Underwood,1994)など、必

ずしも一貫した結果は得られていません。

 

今回は④が正答なので、誤答としていますが、まだまだ確証を得られるエビデンスは無いよく、どちらが正しいかハッキリと言えないのが現状だと思われます。