SSTを生かした作業療法の展開
1.対象の分類
平均年齢が20歳代で罹患機関が短く、比較的短時間で病状安定の「ステップアップ群」
平均年齢が30歳代後半で罹患期間が10年を超えて病状が不安定「病状不安定群」
平均年齢が40歳代後半で病状は比較的安定していながら長期入院「長期安定群」
に分けてアプローチを行う。
2.生活技能を「般化」させるための技法
・宿題
・多彩な例や、複数の治療者
・問題解決技能
・実際の場での練習
・練習の構造、頻度、指導を徐々に減らしていく
・練習の場を実際の場にほぼ同じか、模擬、練習となるようにする。
・獲得した技能を確かなものとするための、自然な強化因子
・生活の場で価値のある、自己支持的な技能
・自己強化ができるようにする
・何回も反復して、十二分に学習する
・練習に当たって、機能的で獲得目標を明らかにする
3.認知機能障害を補う学習方法
①適応的アプローチの直接的学習(SST)
認知機能障害を前提としたスキル学習。ゴール明確化、視覚と聴覚双方からの入力、阻害刺激を避け、訓練場面をわかりやすい構造に保つ。直後の正のフィードバックによる強化
②認知機能を代償する学習方法の使用
無誤謬学習:失敗を犯さないように、的確な指示を行う。
過剰学習:繰り返し練習して、体で覚える。
③認知プロセスの直接的改善をめざす方法
認知的リハビリテーション:注意維持、遂行機能、言語性記憶などの要素的認知機能を直接的に訓練する方法。
リハ内容例(SST的認知リハ中心モデル)
ウォーミングアップ認知リハ(学習療法)
自主企画orダイエットor服薬管理モジュールor SST or心理教育
自主企画、アクティビティ、レクリエーション
4.実践
リーダーは「困っていること」「何とか切り抜けたい」「もっと上手くできたらいいな」と思うことはありませんか?という問いかけを心がける。
就労支援センター(CAC)の職業リハビリテーションにおけるOTの関わり。
作業評価はAMPS
月3回1回2時間
15~20名参加
1年1クール
基礎編
①そのテーマに必要なスキルの検討
②各スキルの必要性の吟味(なぜ必要か?良い例と悪い例の比較)
③基本的場面での練習(基本的訓練モデル)
応用編
①基礎編の振り返り
②メンバーの個々の就労支援や希望に基づいた練習(基本訓練モデルと問題解決技能訓練)と宿題
5.日本で提供されている就労支援のモデル
①train-then-placeモデル(一定の職業前訓練を行って就労のために必要な技能を身につけてから実際に就労体験に以降する)
②place-then-trainモデル(先に職場紹介を行い、続けてその職場において必要な技能にポイントを置いた支援を提供する)
「一般に精神障害者は獲得した技能の般化・応用が比較的困難であると言われており、それゆえ従来のtrain-then-placeモデルに基づいたアプローチは就労支援では上手くいかないことが多い。しかし、日本で提供されている就労支援の多く上手くいかないことが多い。
6.家族教室におけるSST
家族の多くは「本人のために」と自分を犠牲にし、さまざまな悩みを誰にも話すことができず、不安をかかえたまま日々を過ごされている。
家族は「本人の対応に困っている」という気持ちの裏側に、「頑張っていることを認めて欲しい」という気持ちが存在している。家族が「どのように関わっているか」という視点をもつことが大事。
7.司法SST
受刑者の特徴 CAPAS能力検査で平均IQ50程度
コミュニケーション(断る、返答、謝る、自発話)などの苦手者多い
SST基礎講座のプログラム内容
第1回 ウォーミングアップの中心の活動、評価
第2-3回 日常会話スキルの練習-親和的スキル
第4回 体調不良時の対処、お金に困るときの対処
第5回 日常会話スキルの練習
第6回 復習セッション
第7回 相手を責めず、上手に苦情をいう練習
第8回 日常会話のスキルの練習(話が長くなる時の前おきの入れ方)
第9回 復習セッション
第10-11回 きっぱり断る練習(昔の仲間の誘い、保証人や借金の依頼)
第12回 大切な人に感謝を伝える練習 退所後の決意を伝える練習