公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

公認心理師と作業療法士の2足のわらじで働いています。私が体験した治療が上手く行った事例をプライバシーが守れる範囲で簡単に紹介していくことや、治療に関するトピックス、治療者が使いやすいツールや検査法、評価法など紹介していきたいと考えています。

公認心理師試験 過去問 2019 問36 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~

公認心理師試験 2019

問36

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、不適切なものを1つ選べ。

① ADAS

② 回想法

③ COGNISTAT

④ ケアプラン原案の作成

認知症ケアパスへの参加

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答と解説

 

正答は④です

 

 

①ADAS ×

 

「ADAS-J cog. (Alzheimer’s Disease Assessment Scale 日本語版)」(エーダス)は、認知症見当識、記憶、言語機能、行為・構成能力についてみるための検査です。

 

70点満点で実施時間はおよそ40分かかる検査で、0~70点の範囲で、得点は失点であるため、高得点になるにつれて、障害の程度が増していきます。

 

記憶や構成能力の評価に重点が置かれおり、継続的に行うことで認知機能の細かい変化を見ることができます。

 

ADASは、診療報酬点数450点の検査(操作と処理が極めて複雑なもの)に該当されており、検査実施には熟練者が望ましいと考えられますので、公認心理師が行うことが良いと思われます。

 

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとしてADASは適切だと判断しますので誤答とします。

 

 

 

 

 

②回想法 ×

 

回想法は、認知症高齢者に対して、過去のことを思い出す刺激を用いて、昔の思い出を語ったり浸ったりすることを行う心理療法です。

 

ウィキペディアWikipedia)の説明が分かりやすかったので引用します。

 

“回想法(かいそうほう、reminiscence/life review)とは、アメリカ精神科医ロバート・バトラー英語版)によって創始された心理療法である。

 

概要

主に高齢者を対象とし、人生の歴史や思い出を、受容的共感的な態度で聞くことを基本的姿勢とする。個人に対して1対1で行う個人回想法とグループで行われるグループ回想法に分けることができる。

 

回想法は心理療法の一つとしての利用のみならず、アクティビティ、世代間交流や地域活動として利用されることが多い。また、取手市では認知症予防事業として「回想法スクール」「脳活教室」がさかんに行われている。

 

心理療法としての回想法

心理的問題を持つ高齢者に対し、その問題解決を目的としてクリニック、カウンセリングセンターなどで、主に臨床心理士精神科医訓練を受けたセラピストが行う。認知障害記憶障害を持つ人に対しては回想を促す刺激(五感に働きかけ、記憶を呼び起こすもの)を用いることが多い。

 

効果

老年期に人生を振り返り、自己の人生を再評価することで、自尊心を向上させる。 高齢期特有の抑うつ状態の緩和/ <ADL記憶> 10歳~15歳の記憶にADLに関する記憶が含まれているので、10歳~15歳の記憶を失うと、ADLが維持できなくなる。ADLを維持するためにも10歳~15歳の記憶(ADL記憶)を維持することが回想法の目的でもある。(出典:回想療法の理論と実際)日本心理学会2013年発表論文 “

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

 

回想法は、特別実施者を選ばないので、病院では公認心理師臨床心理士はもちろん。看護師や作業療法士精神保健福祉士などどのような職業が関わっても問題はありません。

 

小林幹児は「心理回想法といえども、カウンセリング技術を基本としています。その基礎力に加えて高品質なインタビュー技術を習得することでレミニシャン(心理回想士)となることができます。(小林幹児 2006 「回想療法の理論と実際」  アテネ書房)

 

と述べているので、心理職が回想法行う方が向いているのかもしれません(根拠はありませんが)。

 

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、回想法は不適切ではないので誤答とします。

 

 

 

 

 

③COGNISTAT ×

 

COGNISTAT(コグニスタット)は痴呆性疾患、脳血管障害、頭部外傷等の認知症の臨床評価だけではなく、統合失調症うつ病、アルコール性障害等でおこる認知障害の評価にも使用できる検査です。

 

見当識、注意、語り、理解、復唱、呼称、構成、記憶、計算、類似、判断の11の下位検査で構成されており、結果を図式化でき、どの認知領域にどの程度の障害があるか、どの領域が保たれているかを視覚的にも理解することができます。

 

診療報酬点数は80点で、最近だと、2019年12月COGNISTATの簡易版「日本語版 Cognistat Five」(MCIと認知症のスクーリング検査)が発売されています。

 

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、COGNISTATは不適切ではないので誤答とします。

 

 

 

 

 

 

④ケアプラン原案の作成 〇

 

ケアプランとは、要支援要介護認定された要介護者本人や家族介護者の希望に添った介護サービスを適切に利用できるように、本人家族心身状況や生活の環境などに配慮し、利用する介護サービス種類内容定めた「介護サービス利用計画」のことです。

 

ケアプランは基本的には居宅介護支援事業者やケアマネージャー、介護に関わるスタッフが作成することが多いです。

 

法律上市町村に届け出をすれば自力で作成することも可能となっています。

 

公認心理師が関わり持つ人が被介護者もしくは介護者がいれば、助言をする機会はあるかもしれませんが、ケアプラン原案の作成をするのはケアマネジャーが行うのが適切だと考えます。

 

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、ケアプラン原案の作成は不適切だといえるので正答にします。

 

 

 

 

 

認知症ケアパスへの参加 ×

 

認知症ケアパスとは「認知症の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れ」をまとめたものです。

 

認知症の人やその家族が「いつ」「どこで」「どのような」医療や介護サービスが受けられるのか、 認知症の様態に応じたサービス提供の流れを地域ごとにまとめた「認知症ケアパス」を各市町村で作成しています。

 

市町村により、流れは異なりますが公認心理師がいれば、認知症への気付き、認知症初期集中チームや物忘れ外来での検査や医療機関やサービスに繋げる関りなどで公認心理師が必要になります。

 

Alzheimer 型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、不適切ではないので誤答とします。