公認心理師試験 過去問 2019 問21 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019 問21
問21 マルトリートメントについて、正しいものを1つ選べ。
① マルトリートメントは認知発達に影響しない。
② 貧困はマルトリートメントのリスク要因にならない。
③ マルトリートメントを受けた子どもは共感性が高い。
④ マルトリートメントを受けた子どもは警戒心が乏しい。
⑤ マルトリートメントを受けることは、将来身体的健康を損なうリスクとなる。
解答と解説
正答は⑤です
①マルトリートメントは認知発達に影響しない。 ×
マルトリートメントとは、「人あるいは動物に対する残酷なもしくは暴力的な振る舞い」を意味する英単語であり、日本では特に「大人の子どもに対する身体的・性的・心理的虐待とネグレクト」を包括的に指す言葉となっています。
欧米では、チャイルド・マルトリートメント(日本語直訳で「不適切な養育」)という考え方が一般化してきており、身体的虐待、性的虐待だけではなく、ネグレクト、心理的虐待を包括した呼称であり、大人の子どもに対する不適切な関わりを意味したより広い観念となっています。
マルトリートメントが脳に与える研究(ハーバード大学による)を参考に虐待の種別に分けて脳に与える影響を説明していきます。
○暴言・暴力による虐待の脳への影響
自尊心を傷つけるような暴言「お前なんて生まなければ良かった等」を受けると、大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」の一部の容積が増加するとのことです。
これにより、一つの聴覚刺激が周囲の不特定の神経細胞に伝わるため、全体的な興奮を引き起こし、脳代謝に負荷がかかるようになります。結果、エネルギーの消耗が激しくなり、神経伝達の効率が低下するリスクが生じます。
この結果は、人の話を聞きとったり会話したりする際に、その分負荷がかかると考えられています。
また、暴言を受け続けると、聴覚に障害が生じるだけではなく、知能や理解力の発達にも悪影響が生じることも報告されています。
○激しい体罰による虐待の脳へ影響
小児期に過度な体罰を受けると、素行障害や気分障害などの精神症状が引き起こるといわれています。
厳しい体罰を長期的かつ継続的に受けた人たちの脳では、前頭前野の一部である右前頭前野の一部で、感情や思考をコントロールし、犯罪抑制力に関わっているところをつかさどる部分の容積が19.1%も小さくなっている(トモダ アケミ2009)と報告されています。
さらに集中力、意思決定、共感などに関わる右前帯状回は16.9%、物事を認知する働きをもつ左前前頭前野外側部も14.5%容積が低下していると報告されています。
以上のことからマルトリートメントは認知発達に影響するため誤答とします。
②貧困はマルトリートメントのリスク要因にならない。 ×
マルトリートメントを引き起こす要因の一つであるネグレクトが起きる要因をまとめると
1.望まない妊娠・子供の障害や病気・連れ子
2.育児のストレス・疲れ
3.ネグレクトの連鎖
4.貧困や社会的な孤立
5.親の知識不足
の5つとなります。
児童虐待と貧困は強い関連性を示されており、児童虐待と認定された家庭の30.8%が軽座定期困窮を抱えている(東京都福祉保健局「児童虐待の実態Ⅱ」2005より)との報告もあります。
以上のことから貧困はマルトリートメントのリスク要因になり得るので誤答とします。
のニュースなどで結婚相手が連れ子を虐待するなど、非血縁関係に多いイメージもありますが、虐待の加害者の9割近くが実親です。
様々な統計のグラフを拝見しましたが、概ね2:1の割合で母親の方が件数が多いようです。
実父が最も多いと示したものは無いので誤答となります。
③マルトリートメントを受けた子どもは共感性が高い。 ×
①で説明した鳥
○激しい体罰による虐待の脳へ影響
小児期に過度な体罰を受けると、素行障害や気分障害などの精神症状が引き起こるといわれています。
厳しい体罰を長期的かつ継続的に受けた人たちの脳では、前頭前野の一部である右前頭前野の一部で、感情や思考をコントロールし、犯罪抑制力に関わっているところをつかさどる部分の容積が19.1%も小さくなっている(トモダ アケミ2009)と報告されています。
さらに集中力、意思決定、共感などに関わる右前帯状回は16.9%、物事を認知する働きをもつ左前前頭前野外側部も14.5%容積が低下していると報告されています。
マルトリートメントを受けると、共感などに関わる脳領域の容積の低下が認められているので誤答となります。
④マルトリートメントを受けた子どもは警戒心が乏しい。 ×
暴力、暴言、ネグレクトに限らず恐怖を感じる出来事やトラウマを幼少期に体験すると、軽いストレスに対しても過度な不安やおびえ、泣き叫ぶなどの情動障害を引き起こす場合があります。
言語によるマルトリートメントを受けたグループは、そうでないグループと比べ、大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」の左半球一部である「上側頭灰白質」の容積が14.1%も増加しているとの報告があります。
その結果として、通常の人と比べて注意の向け方が違い、強い情動反応による感覚過負荷と意識狭窄や視野狭窄の間を行き来しており、注意欠陥、集中困難、過集中などの状態が原因となって、自分の状態に気づくことや同時に複数の視点から考えることが難しい状態になります。
さらに、些細な須トレに対して身体は硬直し、自制が利かなくなるため、苛立ちやすく、短気になります。そして、神経が外の世界に向けられ、視覚や聴覚、嗅覚などの知覚過敏から、疲れやすく、闘争・逃走モードのスイッチが切り替わるたびに、前頭葉が十分に機能しなくなり、自分や他者の精神状態を十分に読み取って、受け取ることが難しくなります。
マルトリートメントを受けた子どもは警戒心は強くなると考えられるので誤答となります。
⑤マルトリートメントを受けることは、将来身体的健康を損なうリスクとなる。 ○
マルトリートメントを受けることにより、パーソナリティ障害、精神障害を引き起こるリスクが高まる報告があります。
各種精神障害は身体的健康を損なうリスクとなりますので正答となります。