公認心理師試験 過去問 2019 問51 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 過去問 2019 問51 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問51
緩和ケアにおける家族との関わりについて、正しいものを2つ選べ。
① グリーフケアは家族には行わない。
② リビングウィルの表明には家族の承諾が必要である。
③ 患者の死後、遺族へは励ましの言葉がけが最も有効である。
④ アドバンス・ケア・プランニングに家族も参加することが望ましい。
⑤ レスパイトは家族の看護疲れを緩和するために患者が入院することである。
解答と解説
正答は④と⑤です
① グリーフケアは家族には行わない。 ×
一般社団法人日本グリーフケア協会によると
“死別を経験しますと、しらずしらずに亡くなった人を思い慕う気持ちを中心に湧き起こる感情・情緒に心が占有されそうな自分に気づきます(喪失に関係するさまざま思い:「喪失」としてまとめます)。
また一方では死別という現実に対応して、この窮地をなんとかしようと努力を試みています(現実に対応しようとする思い:「立ち直りの思い」としてまとめます)。この共存する二つの間で揺れ動き、なんとも不安定な状態となります。同時に身体上にも不愉快な反応・違和感を経験します。これらを「グリーフ」と言います。グリーフの時期には「自分とは何か」「死とは…」「死者とは…」など実存への問いかけをも行っています。
このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。”
とあります。
死別による喪失は配偶者、子供、両親、兄弟姉妹など、家族関係であればより強く感じるので、ケアが家族に対するケアが必要になります。
緩和ケアにおける家族との関わりについて、「グリーフケアは家族には行わない。」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
②リビングウィルの表明には家族の承諾が必要である。 ×
公益財団法人日本尊厳死協会によると
“回復の見込みがなく、すぐにでも命の灯が消え去ろうとしているときでも、現代の医療は、あなたを生かし続けることが可能です。人工呼吸器をつけて体内に酸素を送り込み、胃に穴をあける胃ろうを装着して栄養を摂取させます。ひとたびこれらの延命措置を始めたら、はずすことは容易ではありません。生命維持装置をはずせば死に至ることが明らかですから、医師がはずしたがらないのです。
あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。“
“リビング・ウイル(終末期医療における事前指示書)について、「7.ご家族や医療者との話し合いや合意は望ましいのですが、最も優先されるべきはご本人の意思です。LWを作りたくない方は作る必要がなく、強制されたものは無効です。大切なことは、医療者、ご家族、あなたをサポートしてくれる方とLW情報を共有し、理解し合えることです。」”
と述べられています。
家族と共有して考えることが重要とされていますが、最も優先されるべきはご本人の意思となっています。
緩和ケアにおける家族との関わりについて「リビングウィルの表明には家族の承諾が必要である。」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
③患者の死後、遺族へは励ましの言葉がけが最も有効である。 ×
アルフォンス・デーケンの悲嘆のプロセス12段階によると
1段階 精神的打撃と麻痺状態
愛する人の死という衝撃によって、一時的に現実感覚が麻痺状態になります。頭が真空になったようで、思考力がグッと落ち込んでしまうのです。この状態は、心理学で言う一種の防衛機制と考えられます。心身のショックを和らげる、生体の本能的な機能です。
2段階 否認
死という事実を認めることを否定します。感情だけでなく、理性も死という事実を認めようとしません。「あの人が死ぬはずがない。きっと何かの間違いだ。」という心理です。
3段階 パニック
身近な人の死に直面した恐怖から、極度のパニック状態に陥ります。悲嘆のプロセスの初期に顕著な現象です。なるべく早く抜け出すことが望ましく、またこれを未然に防ぐことは、悲嘆教育の大切な目標の一つといっていいでしょう。
4段階 怒りと不当感
ショックがやや収まってくると「なぜ私だけが、こんな目に合わなければならないのか」という、不当な仕打ちを受けたという感情が沸き上がってきます。ガンのように、長期間看病した場合には、ある程度心の準備ができる場合もありますが、急病や災害、事故、自死などのような、突然死の後では強い怒りが爆発的に吹き出してきます。
故人に対しても、また自分にひどい仕打ちを与えた運命や神、あるいは加害者、そして自分自身に対する強い怒りを感じることもあります。
5段階 敵意とうらみ(ルサンチマン)
周囲の人々や故人に対して、敵意という形でやり場のない感情をぶつけます。遺された人のどうしようもない感情の対象として、犠牲者を必要としている場合が多いのです。病死の場合、敵意の矛先は、最後まで故人のそばにいた医療関係者に向けられるケースが圧倒的です。日常的に患者の死を扱う病院側と、かけがえのない肉親の死に動転している遺族側の間に、感情の行き違いが起こる場合が多いからです。
6段階 罪意識
悲嘆の行為を代表する反応です。「こんなことになるのなら、生きているうちに、もっとこうしてあげればよかった。」という心境です。過去の行いを悔やんで自分を責めることになります。
7段階 空想形成・幻想
空想の中で、故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞います。亡くなった子供の部屋をどうしても片付けられず、何年もそのままにしているという例はあちこちで聴きます。いつ子供が帰ってきてもいいように、毎晩ベッドの上にパジャマまでそろえておくという話もあります。
8段階 孤独感と抑うつ
葬儀などが一段落し、周囲が落ち着いてくると、紛らわしようのない寂しさが襲ってきます。健全な悲嘆のプロセスの一部分ですが、早く乗り越えようとする努力と周囲の援助が大切です。
9段階 精神的混乱とアパシー(無関心)
日々の生活目標を見失った空虚さから、どうしていいかわからなくなり、あらゆることに関心を失います。
10段階 あきらめー受容
「あきらめる」という言葉には「明らかにする」というニュアンスが含まれています。自分の置かれた状況を「あきらか」に見つめて受け入れ、つらい現実に勇気をもって直面しようとする努力が始まります。
11段階 新しい希望ーユーモアと笑いの再発見
悲嘆のプロセスをさまよっている間は、この苦しみが永遠に続くような思いに落ち込むものですが、いつかは必ず、希望の光が射し込んできます。
こわばっていた顔にも少しずつ微笑みが戻り、ユーモアのセンスもよみがえってくるのです。ユーモアと笑いは健康的な生活に欠かせない要素です。その復活は悲嘆のプロセスをうまく乗り切ったしるしとも言えましょう。
12段階 立ち直りの段階ー新しいアイデンティティの誕生
そして、立ち直りの段階を迎えます。しかし、愛する人を失う以前の自分に戻るということではありません。苦悩に満ちた悲嘆のプロセスを経て、新たなアイデンティティを獲得し、より成熟した人格者として生まれ変わることができるのです。
と述べています。
全員がこの12段階のプロセスすべてを、必ずしも経験するとは限りません。また、プロセスの順序も順番通りではありませんし、同時に複数の段階を経験することもあります。一時的に前の段階へ戻ってしまうこともあります。
このプロセスを参考に考えると励ましより、悲しみと直面し受容していくことが重要なので、想いを傾聴することが支援として必要だと考えられます。
場合によって励ましの言葉がけをすることもないことはないと思いますが、最も有効かと問われるとそうではないと考えます。
緩和ケアにおける家族との関わりについて「者の死後、遺族へは励ましの言葉がけが最も有効である。」という選択肢は正しいといえないのと考えられるので誤答となります。
④アドバンス・ケア・プランニングに家族も参加することが望ましい。 〇
医療者や家族を含めた話し合いを繰り返し、よりよい選択ができるよう話し合う相談過程をアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)と呼びます。
厚生労働省のホームページでは、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」について、愛称を「人生会議」に決定しましたので、お知らせします。
とあり、名称として
「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)」→「人生会議」に変更になっているので今後、呼び方に変更がありそうです。
アドバンス・ケア・プランニングに関しての考え方、進め方に関しては厚生労働省のホームページに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」があります。「人生会議」してみませんか|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 参照
改訂 平成30年3月
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
1.人生の最終段階における医療・ケアの在り方
① 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。また、本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。
さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要である。
②人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。
③ 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要である。
④ 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない。
と記されています。
以上のことから、基本的に家族を含めて、人生の最終段階における医療・ケアについて話し合うことが重要だと理解できます。
緩和ケアにおける家族との関わりについて「アドバンス・ケア・プランニングに家族も参加することが望ましい。」という選択肢は正しいと考えられるので正答となります。
⑤ レスパイトは家族の看護疲れを緩和するために患者が入院することである。 〇
レスパイトとは、一時的中断、延期、小休止などを意味する英語で、在宅で介護や看護を行っている人の疲労を緩和する目的でショートステイなどのサービスを提供することをレスパイトケアと呼びます。
レスパイトケアは、「在宅介護・看護の継続が可能になること」を目的としています。介護や看護は休みなく延々と続くので、サービスが無いと限界を迎えて介護困難な状態になることも少なくありません。そのため介護者に対するサービスが在宅介護を継続するのには重要となります。
緩和ケアにおける家族との関わりについて「レスパイトは家族の看護疲れを緩和するために患者が入院することである。」という選択肢は正しいと考えられるので正答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問50 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問50
公認心理師法について、正しいものを2つ選べ。
① 公認心理師の登録を一旦取り消されると、再度登録を受けることはできない。
② 公認心理師は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合にはこれを拒んではならない。
③ 公認心理師は、その業務を行ったときは、遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない。
④ 公認心理師は、心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
⑤ 公認心理師は、公認心理師法に規定する公認心理師が業として行う行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
解答と解説
正答は④と⑤です
①公認心理師の登録を一旦取り消されると、再度登録を受けることはできない。 ×
公認心理師法の第三条によると
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
一 公認心理師法第3条第1号の文部科学省令・厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により公認心理師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
とあります。
第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消された後、2年経過することで再度登録できることになっています。
「公認心理師の登録を一旦取り消されると、再度登録を受けることはできない。」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
②公認心理師は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合にはこれを拒んではならない。 ×
公認心理師法において、このような規定はありません。
心理に関する支援を要する者から相談の求めがあっても、断ることが適切な場合もありえます。以下に例をまとめます。
・命の危機があり、設備が整った医療機関、精神科医への紹介が適切な場合
・カウンセラーの能力を超えており、成果が出せない場合
・長期的な介入が困難な場合
・適切な業務量を保てない場合
などの場合は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合でも断る方が正しいと思います。
医師法第19条には、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とあります。
公認心理師の国家試験は医師法との違いを問う問題が多いので、医師法と見比べることが国司対策になると思われます。
「公認心理師は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合にはこれを拒んではならない。」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
③公認心理師は、その業務を行ったときは、遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない。 ×
公認心理師法には記録に関する規定がありません。
医師法第24条第1項には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と記載があります。
これは医師法との違い問う問題ではなく、単に公認心理師の記録に関する法律の整備は整っていないのではないかと考えます。
これから、公認心理師の診療報酬に関する部分が進むことで、整備されていくと思われるので、今後追記されるのではないかと予測できます。
「公認心理師は、その業務を行ったときは、遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない。」という選択肢は正しいといえないので誤答となります。
④公認心理師は、心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。 〇
公認心理師法第42条第2項によると「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」とあります。
「公認心理師は、心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」という選択肢は正しいといえるので正答となります。
⑤ 公認心理師は、公認心理師法に規定する公認心理師が業として行う行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。 〇
公認心理師法第43条によると「公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」とあります。
「公認心理師は、公認心理師法に規定する公認心理師が業として行う行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。」という選択肢は正しいといえるので正答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問49 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問49
心理的支援を要する者へ多職種チームで対応する際に、公認心理師が留意すべき点として、不適切なものを1つ選べ。
① 要支援者もチームの一員とみなす。
② 要支援者の主治医の指示を確認する。
③ 多重関係に留意しながら関連分野の関係者と連絡を取り合う。
④ チームに情報を共有するときには、心理学の専門用語を多く用いる。
解答と解説
正答は②です
① 要支援者もチームの一員とみなす。 ×
上記の絵は一例ですが、最近は患者本人、クライエントなどの要支援者本人がチーム医療の一員となり支援していくのがポピュラーな考え方となっています。
精神科医療においても、患者本人をカンファレンスに参加してもらい、一緒に支援方法を検討していく方が望ましいとされています。
以前は当事者が居ないところで支援方法を検討することが当たり前だったので、今後普及していって欲しい考え方だと感じます。
「沈黙の受け取り方は文化によって多様である」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
心理的支援を要する者へ多職種チームで対応する際に、公認心理師が留意すべき点として、要支援者もチームの一員とみなすことは適切といえるので誤答となります。
②要支援者の主治医の指示を確認する。 〇
公認心理師法第42条第2項によると
「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」
と記載されています。
公認心理師は、クライエントに主治医がいる場合は指示の確認をすること。
「沈黙はクライエント自身の内的探索を阻害する」という選択肢は、心理面接における沈黙について、誤っているといえるので正答となります。
③沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある。 ×
①で述べたように、沈黙は文脈や状況によりますので、沈黙により不快を感じることもあるでしょう。
例えば、クライエントがすぐに反応が欲しい状況で沈黙をすると「ちゃんと話を聞いてくれているのか?」と疑問に感じてしまうなど、不快さを増大させる要因になりえます。
「沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
④沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる。 ×
②に記述した「動きのある沈黙」の“4.クライエントがある事柄・感情を告白してホッと一息ついている沈黙”や、“5.気持ちが静まるまでしばらく話したくないという沈黙”は、クライエントの今の心情を理解していることを示すことできます。
意味のある必要な沈黙を共有することで、共感に繋げることもできます。
「沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問48 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問48
心理面接における沈黙について、誤っているものを1つ選べ。
① 沈黙の受け取り方は文化によって多様である。
② 沈黙はクライエント自身の内的探索を阻害する。
③ 沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある。
④ 沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる。
解答と解説
正答は②です
①沈黙の受け取り方は文化によって多様である。 ×
沈黙の受け取り方は文化によって様々です。
日本は思いやりの文化なので、沈黙を美徳と捉えることもします。
もちろん全ての沈黙に美徳を感じるわけではなく、文脈や状況によりますので、沈黙により不快を感じることもあるでしょう。
沈黙の長さが国によって大きく異なることが分かっており、
日本や韓国などは沈黙を長く使う国で、アメリカやオーストラリア、スペイン、フランスなどは沈黙が短い国と知られています。
文化的に沈黙が短い国と長い国で沈黙に対して感じとる意味合いが、沈黙の長さや沈黙が起きる際の状況や会話の内容により変化すると考えられます。
「沈黙の受け取り方は文化によって多様である」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
②沈黙はクライエント自身の内的探索を阻害する。 〇
カウンセリングの場において沈黙を利用することが重要とされています。ロジャーズはカウンセリングでの沈黙の場面はとても大切だと説いています。
沈黙の後に、クライエントから発せられる内容は洞察が深まったものが多く、沈黙や間があるからこそ発せられる言葉があったりします。
沈黙には「動きのある沈黙」、「動きのない沈黙」に分かれます。
「動きのある沈黙」は
1.クライエントがどういうふうに表現しようか言葉を探している沈黙。
2.自己洞察を行っているときに生まれる沈黙。
3.カウンセラーの言葉をじっくり味わっている沈黙。
4.クライエントがある事柄・感情を告白してホッと一息ついている沈黙。
5.気持ちが静まるまでしばらく話したくないという沈黙。
などがあります。
カウンセラーが意図的に沈黙を使い、クライエントのペースや気持ち、情報の整理、沈黙による与える印象の違いなどを操作するなどの意味をもつものとなります。
「動きのない沈黙」は
1.クライエント自身が極度に抑圧され緊張している沈黙。
2.クライエントがカウンセリングに拒否的な態度による沈黙。
3.特に話すことも浮かばず、クライエントが少し居心地の悪さを感じている沈黙。
などがあります。
このような沈黙には、相手の気持ちや思考の洞察を図りつつ、発言したいと思うように関わりを持っていきます。
沈黙はクライエントの言葉と同様、意味を持っており、沈黙の意味から内面を探索することでカンセリングが進んでいきます。
「沈黙はクライエント自身の内的探索を阻害する」という選択肢は、心理面接における沈黙について、誤っているといえるので正答となります。
③沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある。 ×
①で述べたように、沈黙は文脈や状況によりますので、沈黙により不快を感じることもあるでしょう。
例えば、クライエントがすぐに反応が欲しい状況で沈黙をすると「ちゃんと話を聞いてくれているのか?」と疑問に感じてしまうなど、不快さを増大させる要因になりえます。
「沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
④沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる。 ×
②に記述した「動きのある沈黙」の“4.クライエントがある事柄・感情を告白してホッと一息ついている沈黙”や、“5.気持ちが静まるまでしばらく話したくないという沈黙”は、クライエントの今の心情を理解していることを示すことできます。
意味のある必要な沈黙を共有することで、共感に繋げることもできます。
「沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる」という選択肢は心理面接における沈黙について、正しいといえるので誤答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問47 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問47
アレキシサイミア傾向の高い心身症患者の特徴について、正しいものを1つ選べ。
① 身体症状より気分の変化を訴える。
② ストレスを自覚しにくいことが多い。
③ 身体症状を言葉で表現することが難しい。
④ 空想や象徴的な内容の夢を語ることが多い。
解答と解説
正答は②です
①身体症状より気分の変化を訴える。 ×
アレキシサイミア(失感情症)とは、アメリカの精神科医であるP.E.Sifneos(シフネオス)らにより1970年代に提唱された性格特性の概念であり、この言葉は、ギリシャ語のa (非)、lexis (言葉)、thymos (感情)を組み合わせたもので、「感情に言葉がない (no words for feeling)」という 意味を表す造語となっています。
アレキシサイミア(失感情症)とは、自分の状態を知ることの障害で、感情を認知、自覚したり、表現したりすることを苦手とし、想像力や空想力の欠如を示す特性です。
アレキシサイミア(失感情症)の特徴をまとめると
1.自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である。
2.感情を他人に言葉で示すことが困難である。
3.貧弱な空想力から証明されるように、想像力が制限されている。
4.(自己の内面よりも)刺激に結びついた外的な事実へ関心が向かう認知スタイル。
の4つにまとめられます。
アレキシサイミア(失感情症)の症状をまとめると
1.他者とのコミュニケーション苦手
2.気分が悪いと感じたら、無意識に考えないようする
3.嫌な気持ちになった場合、気分を解消する行動をとらずにはいられなくなる
4.本を読んでも登場人物の気持ちを感じることができない。
5.泣いているのに自分が泣いているという実感がない。
とまとめられます。
上記に「(自己の内面よりも)刺激に結びついた外的な事実へ関心が向かう認知スタイル。」と記述されている通り、身体症状が気分(内面)に結びつきづらく、の変化を訴える。
50 歳未満であれば対象となるは正しいとはいえないので誤答となります。
②ストレスを自覚しにくいことが多い。 〇
①に記述した、「1.自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である。」の通り、
感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難さから、ストレスの自覚のしにくさに繋がってきます。
ストレスの自覚のしにくさはアレキシサイミア(失感情症)の特徴ともいえます。
アレキシサイミア傾向の高い心身症患者の特徴について、正しいので正答となります。
③身体症状を言葉で表現することが難しい。 ×
①に記述した、「1.自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である。」とあり、
自分の感情がどのようなものであるか言葉で表すことは苦手であったり、身体症状の感覚を知覚することは苦手ですが、身体症状を言葉で表現することに対する苦手ではありません。
アレキシサイミア傾向の高い心身症患者の特徴について、正しいとはいえないので誤答となります。
④空想や象徴的な内容の夢を語ることが多い。 ×
①に記述した、「3.貧弱な空想力から証明されるように、想像力が制限されている。」との特徴があり、空想や象徴的な内容の夢を語ることは苦手という特徴があります。
アレキシサイミア傾向の高い心身症患者の特徴について、正しいとはいえないので誤答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問46 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問46
「就労継続支援B型」について、正しいものを1つ選べ。
① 50 歳未満であれば対象となる。
② 一般就労のために必要な訓練が行われる。
③ 障害基礎年金を受給している者は対象とならない。
④ 障害者のうち、雇用契約に基づく就労が可能な者が対象となる。
解答と解説
正答は②です
①50 歳未満であれば対象となる。 ×
就労継続支援B型事業 の対象者は、規則第6条の10第2項によると、
① 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
② 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
③ ①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
と記されています。
②に50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者と記されていますが、50歳未満であれば対象となるという旨の記載はありません。
むしろ、高齢で支援がないと就労が難しい人も該当するという意味で、50歳に達している者が対象者として該当していると考えられます。
50 歳未満であれば対象となるは正しいとはいえないので誤答となります。
②一般就労のために必要な訓練が行われる。 〇
就労継続支援B型の事業概要には、「通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。」と記されています。
②一般就労のために必要な訓練が行われるのは正しいので正答となります。
③障害基礎年金を受給している者は対象とならない。 ×
就労継続支援B型事業の対象者に「50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者」と記載されているように、障害基礎年金の受給を余儀なくされている方を対象に就労のサポートを行うことを目的としています。
障害基礎年金を受給しながら、工賃をもらうことも可能で減額もありません。
障害基礎年金を受給している者は対象とならないというのは正しいといえないので誤答となります。
④障害者のうち、雇用契約に基づく就労が可能な者が対象となる。 ×
就労継続支援B型の事業概要には、「通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。」と記されています。
障害者のうち、雇用契約に基づく就労が可能な者が対象となるというのは正しいといえないので誤答となります。
公認心理師試験 過去問 2019 問45 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問45
SOAP形式の診療録の記載内容について、正しいものを1つ選べ。
① S に神経学的所見を記載する。
② O に患者が話したことを記載する。
③ A に検査データを記載する。
④ P に今後のマネージメントの計画を記載する。
解答と解説
正答は④です
①Sに神経学的所見を記載する。 ×
SOAP方式とは、対象者の問題点を見つけ、医療者としてどうすべきかを考えるためのカルテ記述法です。
医師、看護師、PT、OT、STなどのリハビリ職など様々な職種で導入されている方式となります。
SOAP方式による記録のS・O・A・P、それぞれの項目の意味は
S(subjective):主観的情報
→対象者が話した内容、患者の主観をそのまま表現して記載するなど、主観的に得られた情報
O(objective): 客観的情報
→診察や検査、各種機能評価などから得られたデータを記載するなど、客観的に得られた情報
A(assessment): 評価
→医師の診断や、O とSの内容を元に分析や解釈を行った総合的な評価
P(plan): 計画(治療)
→ Aに基づいて決定した治療の方針・内容、リハビリ内容、生活指導など
SOAP形式の診療録の記載内容について、S に神経学的所見を記載するのは誤りで、Sは
「対象者が話した内容、患者の主観をそのまま表現して記載するなど、主観的に得られた情報」を記載するのが正しいので誤答となります。
②Oに患者が話したことを記載する。 ×
患者が話したことを記載するはSで、Oが診察や検査、各種機能評価などから得られたデータを記載するなど、客観的に得られた情報を記載するのが正しいので誤答となります。
③Aに検査データを記載する。 ×
検査データを記載するのはOで、Aは医師の診断や、OとSの内容を元に分析や解釈を行った総合的な評価を記載するのが正しいので誤答となります。
④P に今後のマネージメントの計画を記載する。 〇
PはAに基づいて決定した治療の方針・内容、リハビリ内容、生活指導などを行うので、今後のマネージントの計画を記載するといえますので、正答となります。