公認心理師試験 過去問 2019 問34 試験問題 解答と解説 ~国家試験合格に向けての勉強と試験対策~
公認心理師試験 2019
問34
学校における自殺予防教育について、最も適切なものを1つ選べ。
① プログラムは地域で共通のものを使用する。
② 学級づくりのできるだけ早い段階に実施する。
③ 目標は早期の問題認識及び援助希求的態度の育成である。
④ いのちは大切なものであるという正しい価値観を提供する。
⑤ 自殺のリスクを抱える児童生徒のプログラム参加は避ける。
解答と解説
正答は③です
①プログラムは地域で共通のものを使用する。 ×
文部科学省のホームページにあるにある「教師が知っておきたい子どもの自殺予防のマニュアル及びリーフレット」
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/1259186.htm)と
「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/063_5/gaiyou/1351873.htm)
を参考にすると、
学校、医療機関、家庭の連携の重要性。地域の様々な人との連携の重要性は書かれていますが、プログラムは地域で共通のものを使用する旨の言葉は書かれておらず、学校においての動きについて書かれています。
学校は学校という思春期の同世代の人が集まるという特殊な環境・状況において、その環境・状況に合わせた学校ならではの取り組みが必要になると考えられます。
よって、地域連携は重要だが、プログラムは地域で共通のものを使用しないと考えられますので誤答とします。
②学級づくりのできるだけ早い段階に実施する。 ×
「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」の「第4章 自殺予防教育実施前後の留意点 1.自殺予防教育実施に向けての下地づくりの教育」によると
「自殺予防を直接テーマとする教育を実施するためには,それ以前に子供の実態に合わせて,自殺予防教育につながる様々な取組を行うことが求められます。 日頃,実施している教育活動の中に自殺予防に焦点化した教育の下地づくり(基盤)となる内容が多く含まれていることを認識し,自殺予防教育と連動させて行うことが,子供及び教師の抵抗感を少なくすることにつながると思われます。 下地づくり(基盤)となる既存の教育活動として「生命を尊重する教育」や「心身の健康を育む教育」,「暖かい人間関係を築く教育」などを挙げることができます。また,これらの教育活動を充実させていくためには,子供たちの些細(ささい)な言動から個々の置かれた状況や心理状態を推し量ることができる感性を高めることや,困ったときには何でも相談できる子供と教師との信頼関係づくり,相談しやすい雰囲気づくり,保健室,相談室などを気軽に利用しやすい所にする居場所づくりなど,子供の心に寄り添う「校内の環境づくり」も重要になります。下地づくりとなる教育活動の充実は,全ての子どもたちが生き生きと学校生活を送るため にも大切です。」
と記されています。
学級づくりのできるだけ早い段階に実施するより、学校全体の下地作りが重要とされていますので誤答とします。
③目標は早期の問題認識及び援助希求的態度の育成である。 〇
「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」の「第4章 自殺予防教育実施前後の留意点 2.自殺予防教育実施前の配慮」によると
“学校における自殺予防教育は,第 3 章で示したように,「早期の問題認識(心の健康)」「援助希求的態度の育成」をねらいとするものです。なかでも,人生のできるだけ早い段階で,生涯を通じてのメンタルヘルスの基礎作りとして,危機に直面した際の援助希求能力を高めることや友人の危機に遭遇した際に一人で抱えず,信頼できる大人につなぐことの重要性を強調しています。”
と記されています。
早期の問題認識及び援助希求的態度の育成が学校における自殺予防教育のねらいとなっているので正答とします。
④いのちは大切なものであるという正しい価値観を提供する。 ×
「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」の「第3章 学校における自殺予防教育プログラムの展開例 1.子供を対象とした自殺予防教育プログラムの方向性」によると
“学校における自殺予防教育の目標は、
「早期の問題認識(心の健康)」「援助希求的態度の育成」です。
ここで提案する自殺予防に関する授業は、
・自殺の深刻な実態を知る。
・心の危機のサインを理解する。
・心の危機に陥った自分自身や友人への関わり方を学ぶ。
・地域の援助機関を知る。
という内容から構成されるものです。
「いのちは大切」といった価値観を一方的に与えるのではなく,五感を通じていのちについて考えることをねらいとしました。正しいと自明視されているものとして価値観を示されると,身近な人を自殺で亡くした人や自傷行為をしてしまう子供たちは,「いのちを大切にできない親(自分)は駄目な存在」と自らを責め,より一層自尊感情を低めてしまう恐れがあります。“
と記されています。
いのちはもちろん大切ですが、思春期のメンラルヘルスの問題では、いのちは大切なものであるという正しい価値観を提供することで発生するリスク、解決しない問題が多くあるので誤答とします。
⑤自殺のリスクを抱える児童生徒のプログラム参加は避ける。 ×
「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」の「第1章 子供の自殺予防に向けた取組に関する検討会の経緯と子供を直接対象とした自 殺予防教育を実施する上での前提条件」によると
“自殺予防教育を実施するに当たって,次の 3つの前提条件について十分に検討しておく必要があることが米国への視察や海外の文献の調査等で明らかにされています。すなわち,①関係者間の合意形成,②適切な教育内容,③ハイリスクの子供のフォローアップ,です。
また、“可能であれば,地域の専門機関に対して,子供対象の自殺予防教育プログラム実施後に,専門機関でのフォローが必要だと判断された子供を紹介する可能性があることを,あらかじめ伝え協力を依頼しておくことが望ましいと思われます。 ”
と記されています。
自殺のリスクを抱える児童生徒のプログラム参加は避けるのではなく、どのようにフォローアップするかを考えることが重要となります。実態としては、具体的な取り組みは各学校や自治体が手探りで行っているような状況だと考えられます。
自殺のリスクを抱える児童生徒のプログラム参加は避けるのは誤りと考えられるので誤答とします。