公認心理師試験の解答と解説 公認心理師 臨床心理士 精神科作業療法士など 精神科で働く人に役立つ情報を発信します

公認心理師と作業療法士の2足のわらじで働いています。私が体験した治療が上手く行った事例をプライバシーが守れる範囲で簡単に紹介していくことや、治療に関するトピックス、治療者が使いやすいツールや検査法、評価法など紹介していきたいと考えています。

作業療法面接法 1.インテーク面接 2.日常のコミュニケーションから聞いておきたい内容 3.作業面接 4.対象者理解(評価)の留意点                  疾患別面接法 1.統合失調症の初期面接 2.うつ病の初期面接  3.強迫性障害の初期面接  4.適応障害の初期面接 5.パーソナリティ障害の初期面接 6.認知症の初期面接

精神科で働く上で最も重要な技術の一つには面接があげられます。

 

 

 

面接で重要になることをインテーク面接から疾患別の面接までまとめていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

作業療法面接法

1.インテーク面接 面接内容

(1)主治医や看護婦から作業療法の必要性についてどのような説明を受けているか。

  ・Ns.からOTの処方箋が出るまでの経緯を聞いたのち、患者からもDr.とどのような話から、OT実施の同意をしたのかを聞く。

  

(2)その説明を受けてどのような思いや期待があるか。

  ・Dr.やNs.に作業療法を進められて、どのように受け止めたか、OTの認識はどの程度あるか、何を期待しているかを確認しておく。

  →作業療法の認識が間違っている場合や、よくわからないで同意した患者も少なくないので、その際は作業療法の説明を行う。

・なぜOTに参加したいと思ったかを知ることが重要!

  →興味関心の方向、意欲、意思表示etcをスクリーニング的に評価できる。

  

(3)今困っていることは何か。

  ・病気や障害を、本人がどのように受け止めているかを確認する!!

   →最初に導入する作業の検討にもなる。

   →困っていることに対応できる作業活動が思いつけば、単にやりたいことではなく、困っていることに対応する作業を、作業特性の説明と共に導入してみるなど。

 

(4)将来的な希望はなにか。

  ・ニードは簡単に出てこないけど、現実検討や自己認知の評価にはなる。

   →現実的な希望であれば、OTの効果や治療の流れを説明し、参加の動機付け、動機水準を上げる。

 

(5)これからやってみたいことはなにか。

  ・OTプログラムの説明を行い、なにをやっていくか話し合う。

   いつ、何時に、どこで、どのようなことを行うかの約束をしておく。

→決められず、まずは一緒に見学する約束をすることも多い。

 見学は不安の軽減にもなる。

→担当者がいるプログラムの参加を進めて「一緒に○○をしましょう」と誘うなど、慣れない環境へ行くことの不安を軽減させることも。

 

 

 

 

 

 

2.日常のコミュニケーションから聞いておきたい内容(2010.小林)

・入院生活の感想(心配事)

・睡眠状態(熟睡感)

・食欲、味、身体的違和感、疲れ

・1日の時間の使い方

・新聞、雑誌、TV、CD等の利用

・話し相手はいるか

・焦り、退屈感

・楽になった、改善した点

・回復状態(何%/100%) 

注意点

・詳細は問わず主体的な体験(感じ)を「サラリ」と尋ねる。

・疲れや怠さ、身体的違和感は自然に回復していくことを伝える。

・新聞、雑誌、CD鑑賞等は回復状態の指標となる。

・回復状態の評価では、自己評価の厳しさや、実質のなさ、否認傾向など判明する場合もある。

 

 

 

 

 

 

 

3.作業面接(一回で完成できる構成的な作業を使用する)

(1)あらかじめOTが選択した作業を紹介し、オリエンテーションを行う。

   (評価の目的で行うこと、目標設定のために行うことを説明する)

  ・作業療法に参加する動機がはっきりしない人であれば「OTのどのようなところがあなたに役立つかわかりません。とりあえずこれをしてみてください。それから一緒に考えましょう」などと

  →認知機能の問題や、病気の受け止め方次第(不信感を持たれる。自尊心を傷つけるなどの理由)では行えない場合も多いので、自然なやり取りの中で行う。本人の興味のあるもので行うことも。

 

(2)実際に用意したい作業(革細工、パズル、箱作りなど)を行い、作業遂行能力、理解力、問題解決パターンなどを評価する。

 

(3)活動終了後に面接を行う。

・課題をどのように感じたか。

・疲労度はどうか。

・作業をしているとき困ったことはなかったか。

・完成した作品をどのように感じるか。

・今後やってみたい作業は何か。など

(4)作業面接の留意点

・「いつでも終わりにしてよい」ことを前提に相談してきめる。

・人数の少ない曜日、時間帯を利用する。

・休む場合は病棟スタッフを介して連絡して欲しい旨を伝える。

→初期より「治療に参加している」という意識を育てる。

・落ち着いて座っていられない場合は早めに切り上げ、「ここでの過ごし方を一緒に考えていこう」など次回につなげる。

・初回は緊張したであろうこと、病棟に帰ってから疲れがでるかも知れないことなどを伝え、疲れや緊張は感じて当然であること、ゆっくり慣らしていって欲しいことを説明し労をねぎらう。

・不明な点は無理に話さなくてよいとの雰囲気、話しの進め方

 

 

 

 

 

 

 

4.対象者理解(評価)の留意点(2010.小林)

作業療法士の自己点検

  1. 患者の「未曾有の体験」に思いを寄せる
  2. 精神科に入院するという「ことの重大さ」を想像する
  3. 「はれものに触れる」「危うさ」などを感じ取り、心理状態の微妙な変化を捉える。
  4. どのような体験をしているか推測する。

 

②状況分析的な理解

  1. 状況像が日常生活にどの程度影響を及ぼしているのか
  2. →どの程度の回復状態にあるのか
  3. どのような環境がストレス状況となりそうか
  4. どのような働きかけが安全な回復促進への助力となりそうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

5.面接場面での作業療法士の心得(統合失調症作業療法の進め方 堀田2009)

①話をよく聞く

・質問は患者の話の内容に関する確認、明確化、整理を目的とする

・あいづちをうつなど、話を理解していることを伝える

・話(感情、要求、悩み)をその人の立場に立って理解する

・個人の秘密に関する質問は慎重に聞く

 →感想や意見は原則としてなるべく控える

 →判断・援助を求められても、安易な保障、約束などはしない

・先入観や価値観を交えず、勝手な理解や判断をしない

・質問に対する抵抗や無言状態、質問したこと以外への話題の転換などがあってもすぐに解消せず、しばらく黙って傾聴する。

②本人が話したいように話してもらう

・はい、いいえでしか答えられない質問はさける

・疼痛、しびれ、苦痛など、できるだけ患者の表現を引き出す

・なかなか表現できない場合には情報収集を急いだり、誘導尋問をしたりしない

・「なぜ」を連発せずに情景描写を促す

③ゆっくりと話す

・早口で話すと冷たい印象を与える

④慎重な態度で接する

・威圧的で、見下すような態度は慎む

・逆になれなれしい態度も信用を失うので注意する

・依存的で自分の側に作業療法士を引き込もうとする態度を示す患者がいる

(その場合はある程度心理的距離を保持するように心がける)

⑤面接で話している内容だけで本人を理解しない

・話している内容と実際の感情が食い違っていることがある。また、報告している内容と実際が違うこともある。

・非言語的情報や他職種から得られる情報と照らし合わせることも必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

6.面接の重要性

インフォームドコンセント

②患者の行動と役割の明確化

 →わかりやすい状況を作る

③当面の目標(心づもり)を限定する

 →戸惑いや不安感をなくす

④日常生活を送る上での標識

⑤自己統制感をはぐくむ

⑥限界設定

→行動の拡散を防ぐ 

「欠陥状態」:急性期の精神状態が消退した後の、感情の鈍麻、意志の薄弱、判断の薄弱、無関心、作業能力の低下などといった外観を呈する「人格の根本的変化」「精神的荒廃」が含意されており、そこには不可逆的なプロセスによる「永続的な全体状態の悪化」。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは疾患別の面接法について書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

1.統合失調症の初期面接

幻覚、妄想

→感覚・知覚・思考の混乱、自己内部と外部の混乱、自己所属性の混乱

→身体的運動、作業能力、社会的能力がいつものように発揮できなくなる。

 

面談場所

最低でも、明るく落ち着いた色彩や素材が配慮された閉塞感の少ない十分な空間が望ましい。視線は水平になるように。位置的は正対でもいいが、位置的関係は自由に変えられるようにな椅子と机が良い(回転性)。

 

初回面接の目標は

否定的印象をできるだけ少なくすること。

 

すらすらと簡潔に説明できる活動期の統合失調症はいない。うさんくさそうに黙っていたり、ぽつりと「わからない」。となぜここにいるのか理解できていない人もいる

入院の経緯、至った理由に関して。

「その方は、なぜあなたにここに行ってみようと勧めたのでしょうか?」

「その方はあなたをどのように見ているのでしょうか」などと問う。

身近な人の自分への見方、あるいは他者の心の推測的理解を問うことは、その人の現実感覚、自己モニタリングの様子を伺うのに適している。

 このあたりからようやく精神病理的言動が露わになる。「(私を)嫌いなんでしょう」、「だまして」、「心配しすぎて」、「来ないと怒るから」、「ほんとは(同伴者)が病気なんです」などと、病的体験世界の中で、発症前の家族との関係や対人関係の特徴が露にされることがある。

 

成育歴、発達経過、リスクファクター

成育歴(妊娠、分娩障害などのリスクファクター)、運動、言語機能の発達。学童期の得意不得意、性格などを語ってもらい、本人に感想を聞きながら、社会生活歴から今回の事態まで、アウトラインを知る。特に思春期までの適応の良否は、予後予測のうえでも重要であるので、「消極的、引っ込み思案、自信がなくおどおど、煮え切らない、自主的に行動できず頼りがち、作業を厭う態度、緊張が強く場に溶け込めない」などの学童期行動の有無は確認しておく。

 

 

 

 

2.うつ病の初期面接

 

生活史についての質問では、どこで、どのように生まれ育ち、現在はどこに住んでいるか、誰と同居しているのか、親友や恋人はいるか、誰と同居しているのか、親友や恋人はいるか、趣味や特技、逆に苦手なことはなにかなど、プライベートな個人史について、ありありとしたイメージが浮かぶくらいに情報を得るとよい。いじめ、不登校、引きこもりの経験、幼少期の家庭環境、友人関係、教師など権威的人物との関係、衝動制御障害、パーソナリティ障害を疑わせる行為などを確認して、病前の対処能力と適応度を評価する。

 ここでは、軽症の発達障害軽症の知的障害を鑑別することが肝要である。前者の場合、主要兆候、すなわち、①対人関係を築く能力はどの程度か、②行動や興味が限定されているかどうか、に焦点を当てて確認する。また、軽症の知的障害は、問診票や生活記録に書かれた自筆による記載や学生時代の成績の聴取などから推測する。

 

 

 

 

3.強迫性障害の初期面接

 「主訴が強迫症状=OCD」と安易に予断せず、器質的異常の可能性、知的な資質、発達の問題、病理水準、気分面の状態などを他の精神疾患との鑑別を念頭に置きながら聴収する。

症状に対する不合理感の薄さや確信的な態度が見られ、応答の雰囲気や思考過程に問題を感じたら、統合失調症の前駆症状の可能性あり。

精神遅滞や境界水準知能を伴う強迫性障害の場合、家族関係や適応レベルを考慮して環境調整第一に行うことが多い。

正確性・対称性へのこだわりやため込み、強迫性緩慢といった症状は、特に発達障害による影響を受けて生じやすい類型症状である。

発達障害に伴うこだわりとしての強迫症状は、症状成立過程における不安の介在の度合いが少なく、ERPの適応にならない場合が多い。

 

治療者が症状について詳しく聴取することで「治療者が自分のことを理解しようとしてくれている」と患者が感じ、以後の治療に乗りやすくなるという効果も持ち合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

4.適応障害の初期面接

適応障害は①心身の不調が存在するが、他の精神障害の基準を満たさない状態にあることを確認し、②患者が置かれているストレス状況を明らかにて、③「心身の不調」と「ストレス状況」の関連を推測することが必要となる。

なので、どこに問題があり適応障害発症に至っているかを評価し、さらには変化の方向性と手段についても考える必要がある。

初期面接の必須要素は①ストレスへの本人の対処戦略(認知行動パターン)を評価し、②患者の対処戦略の変化と方向性と実施法について考えた上で③上記の内容をわかりやすく本人伝えることになるだろう(土居)。

 

 

 

 

 

 

5.パーソナリティ障害の初期面接

「争いを好むか」という質問に対して

「争いを好まない」との返答があれば、スキゾイド・パ障害(分裂)、サイクロイゾ・パ障害(双極)のいずれかである。次いで、一人を好むか、ワイワイガヤガヤを好むか質問し、前者であればスキゾイド、後者であればサイクロイゾである。

「争いを好む」場合、情緒的で空想性に富み、男女関係が華やかであれば演技性パ障害。抑圧的で杓子定規な性格であれば強迫性パ障害を考える。

さらに、感情が烈しく、対人関係が不安定で、見捨てられ不安を持ちやすくければ境界性パ障害を、独りよがりで他罰的であれば自己愛性パ障害を、真面目で対人関係をひどく気を使う性格であれば回避性パ障害を考える。

 

 

 

 

 

6.認知症の初期面接

簡単な日常会話から

取り繕いが見られたらアルツハイマー

感情失禁が見られたら血管性認知症

認知機能の変動が見られたらレビー小体型認知症

立ち去り行動や考え無精が目立てば前頭側頭型認知症 

 

アルツハイマー病の評価

初期(軽度 FAST steag4、HDS-R18~25程度)

記憶障害、見当識障害、遂行機能障害などが原因で、生活に支障をきたしている時期。

エピソード記憶のうち、近時記憶が阻害され、出来事そのものを忘れるようになっている。

妄想は半数以上に見られ、物盗られ妄想が半数を占めている。

うつや無気力になりやすい

※この時期は脳活性化リハで廃用を防ぎ、進行を遅らせることも期待できる。

 

徐々に前頭葉機能が低下しているため、「かなひろい」、「FAB」「TMT」なども行い、活動や作業のレベルを設定し、看護や医師に情報提供を行う。

※特に看護の患者理解を深めるためには重要。

 

中期(中等度 FASTstage5、HDS-R11~17程度)

即自記憶障害。昔のエピソード記憶、手続き記憶は保たれている

多動、徘徊、暴力行為が盛んな時期。

鏡現象。鏡に映った自分を正しく認識できない。(他人は認識できる)

相貌失認や著しい視覚障害を欠く。

感覚失語の様相の呈する。

ADL障害も出現。行為は可能だが、適切に服を選べない(同じ服)、トイレの仕方はわかるが場所がわからない。

 

末期(重度 FASTstage6~7、HDS-R0~10点)

失行、失認が顕著

片足素足、バスタオルを上着だと思う、歯磨きを食べる、便器の横で排便、便器の水で顔を洗うなど

ADLは全介助レベル

筋固縮、ミオクローヌス、歩行障害。

活動性低下していく。

 

脳血管性認知症

ADに比べ、記憶障害少ない、高次脳機能、意欲低下、性格変化。

記憶障害少なく、症状幅広いので、細かく色々評価。

出やすい症状。自発性低下、遂行機能障害、注意障害、感情、欲求の抑制障害、変動の大きさ。

ラクナ梗塞ではパーキン症状出やすいので、レビー小体型と間違う医師が多いので注意

 

レビー小体型認知症

パーキンソン病の原因のレビー小体が中脳黒質だけではなく、大脳皮質、皮質下諸核にも出現した状態。

 

初期は、自律神経系障害中心で、便秘の高率に合併。次に、注意障害、視空間認知障害著名。20~25点代で、MMSEの図形の模写で失点していたらかなり重要所見。それに加え、臭覚障害も見られたらほぼ確実。

パーキンやレビーは神経変性の病期なので、ドパミン作動が早期に障害されるため、臭覚障害も必発する。

その後は、幻視。幻視は後頭葉アセチルコリン放出量の減少と言われている。

 

パーキンソン症状は、振戦は稀だが、固縮と、小刻み、すくみ足など出やすい。あと、体幹の前屈、側屈傾向もみられる。※アリセプトなど服薬開始直後が特に注意!

 

自律神経系障害があるので、起立性低血圧には注意!

転倒が多いので、すぐに拘束対象になるため、早めの歩行器定着か、筋力維持が必要。

メマリーでの回復率はADより大きいため、薬物療法開始後すぐの行動様式、習慣(歩行器など)の習得が機能維持のカギ。

 

前頭側頭型認知症

主な症状は、人格変容、意味性失語、進行性非流暢性失語、

万引き(店の中でお菓子を食べるのを我慢できない等)、暴行を期に入院することが多い。

ほとんど見ない。

すぐ全失語になる。

すぐ寝たきりになる。

SSRIが「周遊行動」を含むBPSDに効果あり。

 

 

 

 

 

 

 

最後に面接の基本技術を簡単にまとめます。

 

 

 

 

動きづけ面接法の基本技術OARS(オールズ)

1、開かれた質問 2、認める、ほめる、肯定する 3、振り返りの傾聴 4、要約するまとめる。